観光客の命をどう守る?「臨時情報」をきっかけに海沿いの観光施設が始めたこと
「土地勘のない人」が「土地勘のない人」を誘導する難しさ
三崎港には最大で13.7mの津波が予想されています。 そして「佐田岬はなはな」や三崎港のある地区は、ほぼ全域が浸水想定区域となっているため、とにかく「山に逃げる」ことが求められます。 「はなはな」では、事前に設定した避難ルートが4つ。 地区の高台にある三崎高校を最も有力な避難場所ですが、海沿いの国道を2kmほど移動しなければいけません。そのため、近くの集落にある高台も避難場所にしていますが、実際に歩いてみると大きな問題が… 佐々木支配人「集落の中では細い路地が多く、初めての人では離合もできないような道もあります。観光客にはこの道は難しいかな」 地震による建物の倒壊で、細い路地が通れなくなるおそれもあるほか、山に逃げるということは土砂災害のリスクもあります。伊方町は細長い半島に位置し、広い範囲が土砂災害の危険箇所に指定。また観光客には高齢者や子供連れ、障害のある人などもいるため、そういった方達をどう誘導するかも課題です。 また、佐々木さんがもう一つ課題に挙げているのが、従業員の「土地勘」です。 「はなはな」には売店と食堂で15人が働いていますが、このうち、この地区に住むのは3人で、他のスタッフは町内の別の地区や隣町の八幡浜市から通勤しています。事前にハザードマップには目を通していますが、日常的にはほとんど通ることがない道も多く、佐々木さんは「土地勘のない人が土地勘のない人を誘導する難しさ」にも頭を抱えていました。
津波から命を守るためのポイントはー
津波からの避難行動を研究している東北大学の今村文彦教授は「自主的に逃げてもらう“周知”」がポイントだと話します。 観光などの際、手元にハザードマップをもって観光する!という人はほとんどいません。 今村教授は、万が一の時に、避難ルートや避難場所がわからないと逃げ遅れにつながるだけでなく、危機意識が高まりパニック心理などに陥るおそれもあるといいます。 そのため、初めての人でも分かりやすい避難ルートや避難場所を記したものやハザードマップなどを施設に来て目につく場所に掲示するなど、「自主的に逃げてもらうための準備」が必要だと話します。 また、客数など、その時の状況によってベストな避難経路を案内できるように「誘導する避難ルートを複数準備すること」。計画を作る際には実際に避難ルートを歩き、危険な場所はどこかなどを確かめたり、避難にかかる時間を確認したりすることも大切だといいます。