震災で「のとじま水族館」から避難のイルカ2頭 10カ月ぶりに“故郷”へ 越前松島水族館が27年前の恩返し
2024年元日に発生した能登半島地震から10カ月が過ぎた。この地震により坂井市の越前松島水族館に避難していたイルカ2頭が19日、のとじま水族館に返された。実は、イルカの保護をめぐっては同水族館と縁があり、越前松島水族館にとって27年越しの“恩返し”だった。 イルカ保護は27年越しの“恩返し”
震災で生き物たちも避難
能登半島地震の影響で、のとじま水族館では水槽の設備の一部が破損するなどしたため、生き物たちを全国の水族館などに避難させていた。 避難先の1つとなった坂井市の越前松島水族館では、ウミガメ8頭、ゴマフアザラシ1頭、カマイルカ2頭を受け入れていたが、ウミガメは7月に、ゴマフアザラシは8月に返されていた。
能登のイルカが”故郷”へ
19日は早朝から飼育員らが慌ただしく動き、残るイルカ2頭を送り出す準備をしていた。イルカを担架に乗せてクレーンで吊り上げコンテナの中に収容し、一頭ずつトラックの荷台に乗せていった。 イルカの保護をめぐっては、実は過去にもこの2つの水族館には“深い縁”があった。
27年前には福井のイルカが石川へ
1997年、坂井市三国町沖で発生したロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」の重油流出事故。青く澄んだ海は、見渡す限り真っ黒の海へと姿を変えてしまい、海岸のすぐそばにあった越前松島水族館のイルカのプールにも重油が流れ込んだ。その時、カマイルカ3頭の避難先として受け入れたのが「のとじま水族館」だったのだ。 そして2024年1月6日、今度は震災で被害を受けたのとじま水族館から、越前松島水族館がイルカ2頭を受け入れることになり、飼育員たちは27年前の恩を胸に約10カ月間、献身的にイルカの面倒をみてきた。 健康に問題なく元気に過ごしてきたというイルカたち。飼育員たちに見送られながら、トラックは能登に向け出発した。
「絶対に元気で返す」という覚悟
飼育員の菊地香織さんは「絶対に元気で返すという思いでいたので、その思いが果たせたという安心と、10カ月間、一生懸命見てきた寂しさの両方の思いで、きょうを迎えた。のとじま水族館で石川県の人のみならず皆さんを元気づけるようないきいきとした姿を見せてほしい」と涙を浮かべながら話していた。 イルカたちは、19日の昼過ぎにはのとじま水族館に無事に到着した。越前松島水族館は、今回のイルカも含め、避難してきた63の生き物の命を守り抜いた。 のとじま水族館・イルカ飼育担当の松岡哲也さんは「正直なところ、ようやく帰ってきたという思い。久しぶりに顔を見たなという感じ。元気に帰ってきてくれたのは、越前松島水族館さんがしっかり飼育してくれたからだと感謝の気持ち。まずはありがとうございます」と安堵に満ちた表情で話していた。 ナホトカ号の重油流出事故から27年。両水族館の支え合いが、たくさんの命をつないでいる。
福井テレビ