給付金詐欺総額2億円に大麻所持… 国税さん、最近若手の不祥事がちょっと多くないですか?
調査のつもりが…
職務で得た知識をもとにした事件の発覚で、国税当局には批判が殺到。これを受けて国税庁は'22年6月、当時の東京国税局長を厳重注意処分とした。国税局トップが処分されるのは極めて異例で、徴税権力が受けた衝撃の大きさを如実に物語っている。 相次ぐ職員の不祥事に対して、国税当局が何も手を打っていないわけではない。各国税局では年に数回、職員の不正を捜査する国税庁監察官が税務署などの職場を訪問。管理職を含む職員全員を会議室に集め、最近の不祥事の事例や、信用失墜行為の事例などについて解説する「監察官予防講話」を実施している。 さらには若手職員の「金銭欲」を刺激しないためのこんな配慮もなされているという。 「税務調査では、パチンコ店や飲食店など現金が動く華やかな場所に潜入し、店内の様子を探りながら所得隠しの端緒をつかむ『内観』と呼ばれる手法を使う場合がある。しかし、そうした場所に頻繁に出入りしていると、『自分も派手に暮らしたい』との意識が高じて、カネ遣いが荒くなる職員が出てきてしまう。 そのため、そうした業種の内観は、特に若手職員には刺激が強いので、意識的に彼らを関わらせないようにしています」(前出の国税幹部) 国税職員がおカネ絡みの不祥事を起こす要因は他にもあるという。それは彼らが生活する国家公務員宿舎の家賃の大幅引き上げだ。 関東地方の場合、国税職員は若い頃の数年間を寮で暮らし、結婚して家族を持つと公務員宿舎に移る。そこで資金を貯めて、共稼ぎなら40代で郊外に一戸建てを購入、そこから職場に通勤するという場合が多いという。もちろん定年まで宿舎暮らしを続ける職員も少なくない。 ところが民主党政権が「都心の一等地にある国家公務員宿舎の宿舎費(家賃)は安すぎる」とやり玉に挙げたことから、家賃は財務省の判断で14年4月から2年おきに3分の1ずつ引き上げられ、18年4月以降は引き上げ前の1・6~1・8倍にも上昇した。東京都心の宿舎の場合、現在の家賃は同地区にある同じ間取りのマンションの半額程度とみられている。 ある40代後半の国税職員は「宿舎家賃の大幅引き上げで暮らし向きが苦しくなり、その不足分を補おうと無届けの副業に手を染める、中堅以上の職員が増えたものと考えられます」と分析。さらにこう続ける。 「国家公務員宿舎は家賃が上がっただけでなく、東京など大都市の中心部にある老朽化した宿舎が建て替えられる際には、場所を郊外に移して建設されています。そこが職場から遠ければ、職員は宿舎を出て家賃の高い民間の賃貸マンションに住まざるを得なくなる。こちらもわれわれの暮らしを圧迫する要因になっています」 こうした不祥事を減らすためにはまず、抜本的な意識改革が求められるだろう。国民の納税意識にも影響する重大な問題。ノミュニケーションに代わる新たな規範伝承の手段を考案し、国税一家の「鉄の規律」を一刻も早く取り戻してほしいものだ。 「週刊現代」2024年11月9日号より
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)