<リベリア ~ パーム油と百姓一揆> 森に隠れて
「暴動があった日の夜、村に警官たちが押し入ってきたんだ。物音で目がさめた俺は、女房と一緒に家を抜け出し森のなかに逃げ込んだ」 注意深く警察の目を避け、森の中で僕はベネディクトと密会した。 自分は暴動に加わっていないが、みつかれば必ず捕まるだろうという。農場ができたときから、ベネディクトは村の代表のひとりとしてGVとの交渉をおこなってきたからだ。 爺さんの代からキャッサバ芋を耕作してきた土地を、農場のために手放した。いまはもうその土地はパーム椰子の幼木で埋め尽くされている。逮捕を恐れる彼は、雨降る中、森で寝泊まりを続けていた。 「森の中で寝るのは嫌だよ。内戦を思い出すからな」 90年はじめに農村部から隆起した反政府兵たちは、村々を襲い、食料や新兵を調達しながら首都モンロビアへと兵を進めた。殺戮から逃れるために、村人たちは森の奥に隠れて過ごした。ベネディクトもそんな一人だった。 内戦中に兵士から逃れ、そしていまはグローバル企業から追われて、彼は再び森の闇に身を隠さざるを得なくなった。(2015年5月) (フォトジャーナリスト・高橋邦典)