名経営者が「利益に直結しない」話をしたがる事情 起業界隈にあふれるポジショントークを疑え
■ビジョンを「メシの種」にする人 話を戻しましょう。 経営者とは異なる理由からビジョンを語る人たちもいます。経営コンサルタントです。 ひと口に経営コンサルタントといっても、専門はさまざまですが、なかでもビジョンを語るのは参入障壁が低く、マーケットが広いのでビジネスとして成り立ちやすい。彼らはビジョンでメシが食えるので、ビジョンの重要性を語るのです。 経営コンサルタントの存在も「ビジョン重視」の状況に拍車をかけているといえます。コンサルはビジョンを語るとお金になりますし、それを聞く起業志望者は、資金計画は不要で、こむずかしいマーケティングを考えず、精神的にキツい営業もせず、ビジョンをしっかり決めたら成功すると思い込むことができます。
安易に夢を見られるという点では、宝くじと一緒です。よく考えたら期待値は低いのですが、コンサルと起業志望者にとっては一見、ウィン-ウィンなのです。 起業志望者が振り回される一例としてビジョンを中心に見てきましたが、専門家はみなポジショントークをし、その内容は人によって変わります。 会計士なら「会計の知識がすべて」と言いますし、行政書士や社労士なら「補助金を使え」と言います。そうして、自分たちのビジネスに集客しているのです。
■とりあえず稼ぐことにフォーカスする 補助金は必ずしも必要なわけではありませんが、メッセージにつられた起業志望者の顧客リストを集めて、補助金申請の手数料で稼いだりしています。 それは決して起業志望者のためを思った発言ではありませんが、世の中にはそんなポジショントークがあふれています。「税金の知識がないから起業できない!」「リーダーシップが足りないから起業できない!」と思わせて本業に呼び込んでいるのです。
飲食に関する起業本には、「売り上げアップには、箸の置き方が大事」と言うものもあります。もちろん、そのとおりだと思います。実際、超一流の店を出すならば、細部までこだわり抜いたほうがいいでしょう。 でも、そうでない場合は、とりあえず稼ぐことにフォーカスし、稼いだあとに成長戦略として超一流を目指せばいいだけです。
村上 学 :株式会社オリジナルベースキャンプ代表取締役