エミー賞最多ノミネート「SHOGUN 将軍」衣装制作秘話 作品を通じて深まる日本のファッション文化への理解とリスペクト
これを実現するためには、膨大な量の組織とスタッフが必要だ。撮影地であるバンクーバーのスタッフに加え、アジア各地の製造会社と綿密に連携し、何千もの衣装を作った。毎エピソード、衣装チームは約85~125人で構成され、シリーズを通して何百ものフィッティングを行った。甲冑を1つ着せるだけでも毎回2人がかりだ。だから主役に着せるスタッフの他、村人や侍など何百人ものフィッターのクルーが毎日撮影現場にいて、撮影に間に合うよう準備を整えていた。この時代の衣服の着付けに精通した、非常に才能のある日本人ドレッサーと出会えたことも幸運だった。
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撮影現場には常に、そのエピソードの主演俳優やバックの出演者の衣装が詰まった大きなトレーラーが4台あった。しかし、それらはあくまで表面上のことにすぎない。スタジオに戻ると、巨大な倉庫は「デザイン・打ち合わせエリア」「型紙や裁断、取り付け、縫製のための作業エリア」「テキスタイルアーティストや染色師のための作業エリア」「侍の軍隊や農村の衣装や備品を全て収納するエリア」に仕切られている。さらに生地や糸、アクセサリーが色ごとに分類された棚が何段も重なり、次に撮影するシーンに備えて衣装を保管する準備室もあった。
WWD:黒澤明監督の娘であり、衣装デザイナーの黒澤和子にアドバイスを求めたと聞いた。
カルロス:和子には、日本人プロデューサーの宮川絵理子を通じて知り合った。和子はZoomでの短い会話の中で、このプロジェクトでどのように衣装をデザインすべきか、多くの指針を与えてくれた。大名が網代や小さな村に行く時の衣装を作るにあたり、「大名は自分の権力や富を見せびらかしたい。そういう時に大名は村に行くのだ」と教えてくれたことで、大名が鎧や軍服の上に着る美しい陣羽織に工夫を凝らした。