「やばい暑さ」はそろそろ限界。異常気象を食い止めるために、今こそ知りたい''ハーモナビリティ''
物理学的な手法で、確かな未来を予測する
気象が様々な分野に影響する中で、日本気象協会がメーカーや小売、電気事業者などの企業を中心に提供しているのが「商品需要予測サービス」だ。協会が保有する気象関連情報と企業の持つ販売記録などをビッグデータとしてAIで分析し、今後必要となるモノの量を予測。特定の商品と気象の関連性を読み解いたり、気温の変化による売れ行きのピークイン・ピークアウトを可視化したりすることで、生産量や在庫の適正管理などに役立てている。 「経済産業省の補助のもと、2014年に食品ロスの削減を主な目的とする実証実験として立ち上がったのが、サービスの始まりです。2017年に正式な事業化を果たしてからは、ビジネス上の機会損失という、広い意味での『ロス』を回避するためのサービスとして、食品関連以外の業界でも導入いただくようになっています。また、無駄のない生産・販売計画の策定だけではなく、『どんなタイミングで、いかに売り込んでいくのか』という積極的なプロモーションに活用いただく事例も増えていますね」 熊倉さんは、サービスが立ち上がってからの10年間の経緯を、このように説明する。ビジネス上の機会損失を防ぐということは、消費者の視点で言い換えれば、求めるサービスが必要なタイミングで届くということだ。 「たとえば、温暖化でスギなどの花粉の飛散時期が早まっている中で、花粉症に悩まれている方に適切なタイミングで薬をお届けしなければいけません。そこで、製薬会社が次シーズンの花粉症薬の展開を考える際には、いつ頃にどのくらいの花粉が飛散するのかといったデータが、生産・販売計画の作成の上でとても重要となってくるんです」 また、在庫や廃棄の削減は、サプライチェーンを健全に稼働させるとともに、省エネ化にもつながっていく。このようなメリットを形にする上で、気象データを活用することの強みを、熊倉さんは次のように語る。 「企業が生産・販売計画を策定するに当たっては、担当の方が培ってきた経験と勘など定性的な要素に頼っているところが大きいんです。そこに気象という定量的なデータを組み込んでもらうことで、より確実な裏付けを持った計画をつくることが可能になります。気象データは、ビジネスの動向を予測するための各種要素の中で、物理学的な手法によって高い確度で未来が予測できる、唯一のもの。それが一番の強みだと思います」