手本は世界的ブランドのルイ・ヴィトンやディオール 日本のモノづくりを支える中小製造業へのヒントがここに
「たとえば、中小企業で1人の広報担当者を雇用しても、それほど仕事があるわけではありません。それなら複数の企業がグループになって、広報機能を共有したほうが効率的です。企業戦略や事業計画も同じことです。そうすれば、経営的に苦戦している会社も立ち直るきっかけができるのではと思ったのです」 このとき、大坪さんの頭の中には“手本”が2つありました。 1つは、世界的ブランドが集まったフランスのラグジュアリー企業「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)」グループです。LVMHはルイ・ヴィトン、ディオール、ヘネシー、ブルガリなど、ファッションから香水、時計まで多様な商品の有名ブランドを傘下に抱えながら、それぞれのブランドに引き継がれてきた伝統を尊重しています。 大坪さんは、そのLVMHの会長兼CEO、ベルナール・アルノー氏がインタビューで語っていたことが、グループ経営のモデルケースとして影響を受けた、と言います。 「LVMHは、M&Aを繰り返しながらも、グループに迎え入れた企業の個性と歴史を尊重し、あくまで裏側でブランド戦略や経営をバックアップすることで個別のブランドを伸ばしています。それまで経営的に苦しんでいたブランドが、本社のインフラや財務によるバックアップを受けて投資をすることで業績が伸びていく。もちろん規模はあまりにも違うんですが、この形は実は個性の強い日本の中小企業に合ったスタイルなんじゃないかと思ったんです」
もう1つは、大坪さんが大学卒業後、家業に戻るまでの間、新卒として入社したベンチャー企業「インクス」での経験でした。インクスは高速金型製造システムや3Dプリンターを活用した企業の草分け的存在でしたが、「雷鳥ファンド」というファンドで国内の優れた技術力のある製造業の再生事業にも取り組んでいました。 「ファンドと言っても、投資利益を重視するものではなく、私も技術面でかかわって立て直しのサポートなどをしてきました。もともといい技術があるけれど経営的に苦戦していた会社が、われわれが入ることによって立ち直っていくのです。そういうケースを見ていて、このような形が実現できればいいなというイメージを持っていました」