あの大ヒット冷凍食品の開発の裏側を、メーカーの「作る人」が語り合う。
2人とも、開発に携わるきっかけは、「まさか」の異動だった。
山田 もともと開発を希望されて会社に入られたんですか? 生子 いえいえ。入社前までは、食品メーカーの花形といえば開発と思っていましたが、いざ入ってそのセクションの責任の重さを垣間見ると、自分には無理だな、と。 山田 私も同じです。なので今の部署に異動を命じられたときは、「え?」という感じで……。そんなクリエイティブな能力、自分にあるのかどうか、と悩みましたね。でもやるからにはいいものを作ろうと、開き直ったところもあります。 生子 非常によくわかります(笑)。山田さんは、商品企画からご担当されているんですか? 山田 私の場合、企画からではなく、そのひとつ先の、実際にラボで粉の配合から考えて商品サンプルを開発するところからの関わりです。
生子 弊社でいう、“研究開発”をされているんですね。 山田 そうですね。生子さんは商品企画からですか? 生子 はい。企画を立てて、研究開発の担当部署に開発をしてもらい、それを工場でどう作るか考える、というのが私の仕事の大まかな流れです。例えば「ザ★シリーズ」の場合、既存商品の多くが“広く、あまねく”の味付けで幅広い層向けでしたが、その外側にいる、今まで冷凍食品を買ったことがない人たちにも買っていただける商品を作り、市場全体をもっと大きくしたいと考えました。そこで出てきたのが、〈男性〉と〈若者〉という新しいターゲット層。その人たちが「ザ★シリーズが食べたい!」とわざわざ冷凍食品売り場に行ってくれる、そんな商品を作ろうということが発端でした。 衝撃の黒いパッケージで、市場を席巻。
山田 なるほど。そこで必要になってくるのはやはり、“既存の商品から頭ひとつ抜けた何か”がある商品ですよね。 生子 おっしゃるとおりです。今までにない味わいというか、感動品質というか。そこは絶対必要だと思いました。ターゲットを設定し、その層に刺さる味で、さらにその誰が食べても感動してくれる味。