400版を出さなかったヤマハの矜持 YAMAHA RZV500R、誕生から40年
1980年代半ば、日本国内のバイクブームは最高潮を迎え、国内4メーカーは次々と新しいモデルを市場に投入し、バイク自体の性能は恐ろしく向上していく。それを引っ張った要因の一つがモータースポーツシーンからのフィードバックである。そう、レーサーレプリカブームの到来である。その一つの頂点が、世界ロードレースグランプリ(WGP)の最高峰クラスGP500に参戦している各ワークスマシンの生き写し。これを市販ロードモデルとして、盛り上がりを見せる市場に投入することであった。そして、1984年、ヤマハから登場した2スト500㏄モデルが「YAMAHA RZV500R」であった。 【画像】RZV関連写真と「RZV500R デビュー40周年記念イベント」の模様をギャラリーで見る(18枚) 文・写真/青山義明 ヤマハ発動機
これこそが我々が望んでいたモデルだ
空前のバイクブームが盛り上がる中、2スト250㏄モデル、そして4スト400ccモデルの中に突如としてレーサーレプリカと呼ばれるモデルが現れ、市場に次々と投入されていく。その究極のモデルはやはりGP500マシンのレプリカである。WGPn位参戦する3メーカーからほぼ時を同じくしてGP500モデルのレーサーレプリカが出たのである。ホンダNS400R、スズキRG400/500ガンマといった具合だ。そして、だがしかしヤマハ発動機だけは500㏄にこだわった。 1984年5月15日に登場したヤマハRZV500R。84万5000円というプライスタグをつけてきた。当時のヤマハ車の中で最も高価なモデルはXJ750Eの68万円である。それを軽く上回る超弩級なプライスタグをつけて登場したこの2スト500モデルは、限定解除免許が必要で、RZVに乗るために教習所に通う者もいたという。まさにそんなモデルであるため、羨望のまなざしを向けられることも多かった。 前年の東京モーターショーで出品されたプロトモデルがほぼそのままで登場したRZVは、角アルミ製のダブルクレードルフレームに水冷V型4気筒500㏄エンジンを積む。前バンクと後バンクそれぞれの2軸クランクの構造を持ち、吸気方式が前はクランクケースリードバルブ、後ろはピストンリードバルブとまるで2つのエンジンを組み合わせたようなエンジンとなっており、国内仕様は64psを発揮した。4本のマフラーは、前バンクからの2本はエンジン下部を通るが、後バンクからはシート下で一度クロスし、シートカウル内を通って後方に出すことになり、リアサスは、エンジン下の前バンクのマフラーの間に前後方向に水平に置く形式を採用している。