<IS拘束事件>海外での情報収集能力 日本の実力は? 軍事ジャーナリスト・黒井文太郎
日本は極秘スパイ活動は行わず
このように、日本政府にも、制度としての情報収集ラインは存在します。 ただ、日本は諸外国とは違い、とにかく現地で問題となるような活動は厳禁されており、極秘のスパイ活動などは一切していません。たとえば、諸外国では偽名旅券を発行し、身分を偽装して情報要員を送りこむなどを日常的に行っていますが、日本からの情報要員はすべて本名の旅券を携帯し、身分がバレバレのまま現地国に赴任します。使える活動費も、非合法組織に与えるなどということはまず行っていませんし、あくまでオモテの情報活動に終始しています。 それも無駄ではありませんが、いざ重大事件が発生したとき、それだけでは不十分ということになりがちです。 また、日本にはこうした各省庁の情報担当はいますが、日本政府の専門の情報機関がありません。世界では、国際テロなどの機微にかかわる微妙な情報は、各国政府の情報機関同士の同業者サークル内で交換されていることが多いのですが、日本の場合はそこに入れる要員がいないということになります。 また、そうした情報の世界では、情報はバーターが常識であり、こちらから提供できる有用な極秘情報がなければ、いかに同盟国といえども、相手から有用な極秘情報を得られることはあまりありません。 日本の対外情報部門には、まだまだ課題が山積しているといっていいでしょう。