南海・阪急阪神・近鉄の“ある共通点”とは? 関西私鉄の「儲ける経営」の最新事情
南海電気鉄道が、2026年4月に鉄道事業を分社化すると発表した。「本業」である鉄道事業を分社化するとはどういうことか、と思う人も多いかもしれない。しかし、本社を持株会社化したり、経営統括部門だけを残して事業会社を子会社化するケースは、私鉄にはよく見られる。世間一般で「鉄道会社」として扱われる会社は、実は総合企業体であり、さまざまな事業を複合的に組み合わせて企業活動を行っているところが多い。そもそもなぜ、鉄道会社は鉄道事業の分社化を進めたり、複数の事業を展開するのか。南海電気鉄道のビジネスモデルをひも解きながら解説したい。 【詳細な図や写真】関西の大手私鉄の経営のトレンドとは?(Photo:Cristi Croitoru/Shutterstock.com)
近鉄も阪急阪神も…大手私鉄の“あるトレンド”
鉄道会社にとって「祖業」である鉄道事業とは何なのか。これを問いたくなるような動きがまた出てきた。2026年4月、南海電気鉄道の鉄道事業を分社化すると発表したのだ。 近鉄グループホールディングスや阪急阪神ホールディングスなど、関西の主要私鉄が軒並み持株会社システムの形態となり、鉄道事業を子会社化していく状況の中、本社直轄で鉄道事業を行う方針であった南海電気鉄道もついに鉄道部門を分社化し、本社はグループの管理、不動産事業の業容拡大や競争力強化、新規事業の開発を行う機能を持たせることにした。 関西の大手私鉄は、鉄道事業を子会社化し、鉄道事業に専念させているところが多い。たとえば、阪急電鉄と阪神電気鉄道は、阪急阪神ホールディングスの傘下にあり、この会社はルーツを一緒にするエイチ・ツー・オーリテイリングと東宝を中心とした企業グループ「阪急阪神東宝グループ」を形成している。これはもう、巨大な総合企業集団と言えるだろう。 関西の主要5私鉄のうち、2つが阪急阪神ホールディングスの傘下にある。子会社の傘下には準大手私鉄や中小私鉄も存在する。 そのほかには、京阪電気鉄道を有する京阪ホールディングスや、近畿日本鉄道を有する近鉄グループホールディングスがある。近鉄グループホールディングスの近畿日本鉄道は、日本の私鉄で最も長い路線網を持つ。各私鉄グループとも、鉄道事業を中心にさまざまな事業を行っており、流通やホテル・不動産は定番となっている。 ■関西の主要5私鉄の状況 一方、南海電気鉄道は、鉄道・バスなどの運輸業のみならず、不動産・流通・レジャー・建設などの事業を行っている。このうち多くの事業は子会社が担っているが、「祖業」である鉄道事業は本社直営となっているのだ。 それでは、実際に鉄道事業とその他事業のバランスはどのような状況だったのだろうか。ここからは、南海電気鉄道が何でどれだけ稼いでいたのか、事業構造をひも解きながら解説していく。