南海・阪急阪神・近鉄の“ある共通点”とは? 関西私鉄の「儲ける経営」の最新事情
南海の稼げてる部門、稼げてない部門とは?
2023年度有価証券報告書には、企業グループ全体での連結従業員数と営業収益・営業利益、提出会社(南海電気鉄道)の従業員数が出ている。 企業グループ全体では、運輸業に従事する人が5276人と多く、次いでレジャー・サービス業に従事している人が2053人となっている。南海電気鉄道では、運輸業の従業員が圧倒的に多い。 営業収益は、運輸業によるものが1,018億1,700万円と、額は大きいのである。つまり、費やす人数も、手に入れるお金も、運輸業が最大なのである。 ところが、利益を得る部門は、不動産業なのだ。147億2,000万円の営業利益となっている。運輸業の81億2,600万円よりも大きい。しかも不動産業にかかわるのは、企業グループ全体でも174人しかおらず、南海電気鉄道でも75人しかいない。 鉄道を中心とする運輸業は、多くの人手が必要で、かつ多数の利用者から少額の運賃・料金をいただくという構造になっている。それゆえに薄利多売のビジネスモデルとなる。 不動産業は、商業施設などの賃貸を行う本社のほか南海不動産という会社が担っており、分譲住宅や分譲マンションを手掛けている。この事業が経営の大きな柱となっているのだ。 駅と直結した立地条件のいい不動産を貸し、駅近くの住宅を販売することで利益を出し、本業とのシナジーどころか本業を下支え、あるいは本業を超えてしまっている経営成績を生み出しているというのが、南海電気鉄道の実態なのである。 このように、分社化の背景には、鉄道事業と不動産事業の性質の違いがあったわけだ。 鉄道事業は、これまでの安全・安心な輸送サービスを今後も続けていく必要がある一方、不動産事業は、グループの成長を牽引していかなければならない。さらに新規事業を作り出していくことも必要だ。 目的の異なる2つの事業の両立は難しく、それぞれの事業の進化のために南海電気鉄道は鉄道事業を分社化することにしたわけだ。