1ドル=160円まで円安加速のリスク、為替ウオッチャーら予想
(ブルームバーグ): 日本と米国の選挙が市場に先行き不透明感をもたらす中、一部の為替ストラテジストは円相場が今後数週間のうちに1ドル=155~160円まで下落する可能性があるとみている。
これは日本の通貨当局の円買い介入が発動され得る水準に戻ることを意味する。加藤勝信財務相は米国時間23日、「投機的な動向も含め、為替市場の動向を緊張感をさらに高めて注視する」と述べた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)やみずほ証券、アセットマネジメントOneなどが160円を予想している。円は23日に153円19銭まで前の日から1.4%も下落し、7月末以来の安値を付けた。今月は対ドルで約6%下落しており、月間ベースで2022年4月以来の大幅安となる勢いだ。
みずほ証券金融市場部の大森翔央輝チーフデスクストラテジストは、「10月には日本銀行が動かないだろう」とし、米国の金利が年末まで高止まりして足元の円安スピードが続けば、「160円になる可能性は高い」と述べた。
160円は日本政府が前回為替介入を実施して円安に歯止めをかけた水準に近い。ブルームバーグが53人のエコノミストを対象に行った調査では、政府に再び為替介入を促すとみられる水準の中央値は160円だった。
「短期的に円ショートが勢いを増せば、160円までの円安リスクはある」と、BofA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジストは言う。「円安進行で投機筋の円ロングは調整されたが、まだそれほど円ショートにはなっていない」と話す。
日米の金融政策の方向性が乖離(かいり)する中、市場で両国の金利差が今後どの程度まで縮小するのかを巡り意見は分かれている。米国の堅調な経済指標と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げに慎重な姿勢が状況を複雑にしている。ここ数週間は米国要因が為替相場を大きく揺さぶり、北米の取引時間帯に円売りが加速した。
シンガポールのサクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、市場の注目度が高い米国の雇用統計で「非農業部門雇用者数が非常に弱くならない限り、相場の方向転換は起こり得ない」とみる。米大統領選挙を前に155円を超える円安も排除できないと予想している。