ドラフトで6人指名の快挙「プロ野球に一番近い」と言われる徳島の独立リーグ球団 高校時代は控え、道半ばで諦めた選手…結果残し開いたプロへの道
今秋行われたプロ野球のドラフト会議で、独立リーグ「徳島インディゴソックス」は阪神2位に椎葉剛投手が指名されるなど、育成選手も含めて6選手がプロ野球への道を切り開いた。全国に21ある日本独立リーグ野球機構所属チームのうち最多で、スカウト担当者が「なかなかない」と評する快挙。実は、徳島は11年連続でドラフト指名が続いている。なぜ、四国の1球団がこれほど多くの日本野球機構(NPB)選手を輩出するのか。背景を探った。(共同通信=米津柊哉) 阪神の優勝を支えたドラフト戦略、「目玉」でなくても役割・ポジションで上位指名 補強から育成へ、「生え抜き」の成長で目指す常勝チーム
▽北海道大から「一番プロに近い球団」へ 徳島から最多の3人を指名した西武の入団交渉後、選手が記者団の取材に応じた。5位指名された宮沢太成投手は心境を率直に語った。「練習の環境面や、指導者、球団関係者にすごく恵まれた。10年輩出が続くだけの環境があると感じている」。北海道大野球部を経て、在学しながら徳島でプレーした。 入団のきっかけや独立リーグでの生活を尋ねるとこう返ってきた。「NPBに行きたくて、一番近い球団がどこか考えたとき、当時10年連続輩出しており一番近い球団だと思った。大学の単位や履修すべき授業は取り切ってから徳島に入団し、野球に集中した。持ち味の直球とフォークや、目標にしがみつく姿勢が磨かれた」 ▽NPBへのモチベーションを上げる インディゴソックスは2005年に誕生した「四国アイランドリーグplus」の球団。「インディゴ」は徳島伝統の藍染めに由来し、靴下を特徴的な青色に染めている。 選手は高卒や社会人経験者などさまざまで、約30人のうち20人程度が毎年入れ替わる。経営や編成など多方面で支えるのが、2015年に球団社長に就任した南啓介さん(41)だ。「技術は監督やコーチが教える。私は、NPBへのモチベーションを上げるのが仕事だ」と話す。
選手全員と年3回、一対一で面談する他、チャットアプリで目標設定や振り返りを促す。他の人に話せない悩みにも耳を傾け「一人一人の頭の中を開拓する」。ベンチに入れなかった選手を励まし、元気な「チーム」をつくり上げていく。2023年は四国アイランドリーグの年間総合優勝を果たした。 南さん自身も野球を24歳まで続けた後、ハンドボールなど野球以外のスポーツ選手のマネジメントも行ってきた。「プロになるのは一つのゴールだが、やりきった先にしか次のステージはない。それが彼らの自信になり、突き詰めた先にかっこよさや生き様がにじみ出る。(徳島での生活を)あの時あそこまでできたと励みになるような期間にしてほしい」と願う。 ▽高校時代は控え。徳島から西武の育成に 徳島には紹介から入団に至るケースが多い。西武育成1位のシンクレア・ジョセフ孝ノ助投手は、米国の大学を卒業後、知人の紹介で徳島へ。西武との入団交渉後、次のように喜びを語った。「大学の卒業が近づいてきて、メジャーリーグのドラフトの可能性が低くなり、どうやって野球を続けるのかという時に、日本の知り合いに紹介してもらった。(育成指名され)ここから精いっぱい頑張ればいつまでも野球を続けられる」 同じく西武の育成2位の谷口朝陽内野手。徳島県出身で、広島県の名門、広陵高校に進んだ。徳島に戻り入団した理由について、こう言った。「1日でも早くNPBに行きたかった。高校時代は控えだったが、頑張ればこうなれると控えの選手に見せたい。徳島に来て恩返しもしたかった」