ドラフトで6人指名の快挙「プロ野球に一番近い」と言われる徳島の独立リーグ球団 高校時代は控え、道半ばで諦めた選手…結果残し開いたプロへの道
▽道半ばで諦めた選手を説得し再生 ここまで紹介した若者のように、最初から自らの意思で門をたたく選手がいる一方、道半ばで退いた選手に南さんが再起を促すこともある。今は西武でプレーする岸潤一郎外野手はその一人だ。 「なんで野球を辞めた? もう一回やってみないか」。南さんは2017年夏、自宅を訪れこう語りかけた。高校時代は甲子園で活躍していたが、大学を中退し野球への気持ちが切れていた時期という。「輝いていたヒーローがつぶれてしまうのはもったいない」。色よい返事が得られなくても南さんは諦めない。「慌てることはないから一回見に来て」 見学は実現し「あの選手、いいですね」などと口にして興味を示した。岸さんは再びユニホームを着ると決意し、同年秋に入団が決定。2019年のドラフトで西武に8位指名された。南さんは「努力を重ね、わくわくさせる選手に成長した」と喜んだ。 ▽選んでもらうため、熱意でプレゼン
独立リーグからはドラフトの下位や育成で指名されるケースが多い。同じような能力の選手のライバルが大勢いるといい、南さんはスカウトとの交流にも力を注ぐ。「選んでもらうために熱意を持ってプレゼンすることが重要だ」 取り組みは11年連続指名の結果に表れ、今年も3人の育成選手を含めて計6人が選出された。西武の鈴木敬洋育成・アマチュア担当は舌を巻く。「(徳島出身選手が)一軍で結果を残しており、チームの評価は高い。6人選ばれるのはなかなかないことだ」 2022年のドラフトでオリックスから育成枠の指名を受けた徳島の茶野篤政外野手は、翌年の開幕戦で先発に抜てきされた。 ▽積み重ねが生む好循環 南さんも「OBがしっかりやってきた積み重ねで、入団選手の質が高くなっている」。こうした実績が潜在能力の高い選手を引き寄せ、次のドラフト指名につながる好循環が生まれている。 2018年にファンになり、徳島で毎試合見に行くという勢井良枝さん(34)は、感慨深い。「監督やコーチが寄り添って遅くまで指導している。地元徳島からNPBに選ばれるのはうれしい一方、寂しさもある」