激安車20台以上を乗り継いだドラゴン山崎流中古車チェック術は前オーナーのプロファイリングにあり!【フィアット500PINK!オーナーレポート vol.2】
真実はいつもひとつ! じっちゃんの名に賭けて!このクルマの前オーナーは30代前半~40代前半の女性だっ!
閑話休題、フィアットに話を戻そう。ボディ同色のダッシュパネルが特徴のインテリアだが、13年落ち・10万9500km走行の中古車ということで、ベージュのシート生地はそれなりに汚れており、本革巻きのステアリングホイールは使用痕が残り、プラ製のドアトリムやセンターコンソールには少々キズがあるが、全体的には年式相応のコンディションと言ったところで、特段良くもなければ悪くもない。エアコンやオーディオ、ステアリングスイッチなどは正常に機能しており、故障が多い電動パワステを含めて不具合は見られなかった。 フィアット500の内装で問題となるダッシュボードの割れだが、幸いなことに助手席エアバッグに少々膨らみは見えるものの亀裂は入っていない。外装プラやゴム部品の劣化から車庫保管というわけではなさそうだが、駐車時にフロントスクリーンにサンシェードをつけるなど、それなりに手当されていた個体かもしれない。 ノーマルと異なるのは、ダッシュパネル助手席側にある「500」のバッジで、数字の部分にはスワロフスキー調のクリスタルでデコレーションされていた。男でこういう飾り付けをするヤツはそうはいないので、前ユーザーは「デコ電」世代の女性と判断して間違いなさそうだ。2000年代に十代を過ごした世代だとしたら、現在彼女の年齢は30代前半~40代前半くらいか? シートに座ってクッションの状態を確かめてみる。チンクェチェントのシートは、体重が重いドライバーが所有者となると、座面が潰れているわ、シート地が伸びるわで、結構悲惨な状態になるのだが、おそらく前オーナーの体重はさほど重くはなかったのだろう。使用頻度がもっとも高い運転席も距離の割にヘタリは少なく、前席はまずまずのコンディションだ。リアシートはどうやらほとんど使っていなかったらしい。
前オーナーの女性の背後にエンスー男性の影あり!?走行距離の割にコンディションを保っているのは彼のアドバイスが効いていた?
あとで登録識別情報通知書を見せてもらったところ、記載のあった前所有者は福岡市内のVWやアウディなどを取り扱う輸入車ディーラーだった。ということは、たぶん前オーナーはこのフィアットを下取りに出して再び輸入車に乗り換えたのではないか? 登録識別情報通知書と予備検査証を見ると2019年の車検時の走行距離は4万600km。その2年後となる2021年の車検時が7万5600km、そして今回予備検時の走行距離は10万9500kmと記載されていた。 新車登録から9年目までの走行距離が4511km/年だったのに対し、直近の4年間では1万7255km/年と大きく延びている。乗り方が変わったということは、おそらくは2019年にオーナーチェンジ……つまりは中古車を購入したということだ。だとすれば、車検証の履歴から考えてこのクルマは2オーナー車、距離をほとんど乗らない所有者が2代続いたとしても3オーナー車と考えて良さそうだ。 2019年前の時点で、4万600kmという走行距離のフィアット500 PINK!の中古車相場は、車両本体価格でだいたい138~168万円だったはずだ。当時で10年落ちのコンパクトカーということを考えれば、いかに希少な限定車であれ割高感は残る。前オーナーは愛くるしいピンクのフィアット500と中古車店で出会い、一目惚れしたのかもしれないが、ある程度のイタリア車に関するホースセンスと生活にゆとりがなければ、9年落ちの輸入コンパクトカーにこの金額を支払う気にはなれなかっただろう(同程度の標準仕様ならずっと安く買えた)。とすると、裕福な家庭であるだけでなく、家族か友人・知人に低年式のフィアットを購入してもサポートしてくれる輸入車……それもイタリア車に精通した人間がいた可能性が高い。 それというのも、ノーメンテのまま短期間ででこれだけの距離を走れるほどイタリア車は甘くはないからだ。前オーナーの女性にクルマの知識がどの程度あったかは定かではないが、ディーラーかそれに準じた整備工場で然るべきメンテナンスを受け、コンディションが悪化する前に早め早めに手を打たなければ良い状態で維持することは難しく、彼女の近しい人間に予防整備をアドバイスする自動車趣味人でもいたのだろう。 ひょっとすると、クルマを買い替えた理由も単に飽きたとか、古くなったからという理由ではなかったのかもしれない。そもそも前オーナーは4年前の購入時点で10年落ちの輸入コンパクトカーにそれなりの金額を支払い、アシとして惜しげなく活用するようなパーソナリティの持ち主だ。この特別なフィアット500を手に入れたときは乗り潰すつもりだったのかもしれず、リセールなど気にすることなく距離を伸ばしたのだろう。 しかし、最近になって何かしらの生活の変化があり、購入から4年で降りることになったのかもしれない。おそらく、それは女性ならではの事情。結婚や出産という問題が絡んでいると筆者は推理する。前述の通り、このクルマの運転席側のサイドシル周辺にはベルトストッパーによるものと思しき凹みがあったが、リアシート座面にはベビーシートを取り付けた痕跡がなかった。そんなことからも前オーナーがフィアットを手放した経緯がなんとなく見えてくるのだ。
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