「103万円の壁」は“壁四天王”の中で最弱? 国民民主の“真の狙い”に迫る
国民民主党が掲げる「年収103万円の壁の解消」に対し「そんな壁は幻だ」という声がある。 【映像】意識がグラフにくっきり!「103万円」を境に激減する労働者 「103万円の壁の実態」と国民民主党の狙いについて、東京大学社会科学研究所の近藤絢子教授に話を聞いた。
◼️手取りが減るのは「130万円の壁」
近藤教授は、既婚女性のパートタイマーのケースとして「年収が103万円から104万円になると1万円分が所得税の課税対象になり、5%=500円の所得税がかかる。それに加えて住民税が10%かかるため合計1500円かかる。なお、住民税は103万円からではなく、100万円からかかる」と説明。 つまり、収入が103万円から104万円になっても手取りが大きく減るわけではないのだ。だが、近藤教授が分析したところ、「103万円」という数字が過剰に意識されている実態が明らかになったという。 原因について近藤教授は「正直私もはっきりこれが原因と断言できる理由がない。いくつか可能性がある。『会社の家族手当』で所得制限があるために収入を抑えている人も一部いると思うが、それだけでこんな数になるわけはなく。『103万円を超えると配偶者控除がなくなる』と誤解している人や、なんとなく103万円と言われ続けているので合わせている人も多いと考えられる」 合理的な理由がないにもかかわらず多くの人が103万円で調整をしているということは幻の壁と言えるのか? という問いに対し近藤教授は「言えると思う。実際には制度上の壁はないにもかかわらずなぜかそこに合わせている人はたくさんいる」と答えた。 一方で扶養から外れ、社会保険の負担が大きくなり手取りが減るのが「130万円の壁」だ。 「扶養から外れると国民健康保険に入る必要が生じ、国民年金保険料も払わなくてはいけない。そこは本当に壁が存在する。国民年金保険料は約20万円、国民健康保険は自治体によるが約10万円だ」 近藤教授は2017年から2021年のデータを使用して分析しているが、制度の理解が進んだことで現在は「103万円の壁」を過剰に意識する人が減っている可能性もあると指摘。その場合、段階的に現れる他の壁も踏まえたさらに進んだ議論が必要だという。 「議論が盛り上がることで報道も増え、そのことで制度の理解が進むのは良いことだが、基礎控除を引き上げるだけでは壁の位置がずれるだけで本質的な解決にはならない」