AIアプリで楽しくハッカソン!「24時間AIハッカソン」はどうだった?優勝の決め手は?【AIフェスティバル 2024】
11月8~9日、ベルサール秋葉原にて「第2回 AIフェスティバル」が開催された。 【画像】「たこ焼きテクノロジーズ」の三上典秀氏。 様々なトークセッションに加え、AIのアートグランプリの最終審査会などが行われ、多くの人で盛り上がっていた。今回はその中から、第2回となる「24時間AIハッカソン」の優勝チームが集う座談会の様子をレポートする。 昨年行われた「24時間AIハッカソン」は東京のみで行われたが、第2回となる今回は全国3カ所、大阪は5月、福岡は7月、東京は9月に開催された。 「第2回AIフェスティバル」の「24時間AIハッカソン 優勝チームの集い」では、それぞれの優勝チームが集結し、ハッカソンにまつわるエピソードを語ってくれた。 【優勝チーム】 大阪大会 たこ焼きテクノロジーズ 福岡大会 捗dle(はかどる) 東京大会 異業種データサイエンス研究会(関東) ■ 三者三様の優勝者、学生にエンジニア、還暦のフリーランス…… 大阪の優勝チーム「たこ焼きテクノロジーズ」からは三上典秀氏、福岡の優勝チーム「捗dle」からは佐藤永尚氏、窪田大地氏、大谷友輝氏の3人、東京の優勝チーム「異業種データサイエンス研究会(関東)」からは井伊篤彦氏が登壇した。 司会は経済キャスターの瀧口友里奈氏、そして24時間AIハッカソン事務局の大沼功氏も登壇した。 ――自己紹介とハッカソンに参加された経緯を教えてください。 [三上氏] 「たこ焼きテクノロジーズ」の三上と申します。普段は産業用IoTやAIを製造業に導入する仕事をしています。私はAIがめちゃくちゃ好きで、Xで最新の情報を追っていたら、清水亮さんがハッカソンを大阪でやるということで、しかも賞金が出る。これは出るしかないだろう、とインターンの学生に声を掛けたらたくさん集まって、2チーム作って参加しました。 [捗dle] 僕たちは九州工業大学の学生です。Xを見ていたら、AIハッカソンが開催されるというの見ました。AIに関するハッカソンってなかなかないので、せっかくなので参加してみようと、周りでAIに興味ある学生を探して集まった3人で参加しました。 [井伊氏] 私は還暦で、フリーランスをしてます。Facebookで5000人を超えるコミュニティ「異業種データサイエンス研究会」を運営しています。今年の最初に清水亮さんが企画された長岡のAIハッカソンに参加した人がコミュニティメンバーにいるのですが、今度大坂でハッカソンがあるということで声をかけて大阪チームができました。東京でもやるということで、東京のメンバーも集めて、みんなでわいわいやろうっていうことで参加いたしました。 [大沼氏] そう言ってもらえるだけで、僕らはハッカソンをやってよかったなと思います。実際、会場ではハッカソンの参加者たちはわいわいやっているんですよ。 ■ 「アイデア出しをする練習をしてました」 ――皆さん、24時間AIハッカソンに参加する前、どんな事前準備をされましたか? [三上氏] 1週間ぐらい事前準備にかけました。「ガレリア」を借りて、すぐにAIを動かしたかったので、SSDブートする外付けの記憶装置を作り、AIモデルを8個入れて準備をしました。 [捗dle] 3人のうち2人がハッカソンに初めて参加するので、(5月に開催された)大阪会場の「夢」というテーマを元に、想像を膨らませて、アイデア出しをする練習をしていました。 [大沼氏] 想像を膨らませるのは大事ですね。24時間しかないので、発表されたテーマに沿ってどういうものを作るのか、というアイデア出しのスピードが求められる競技でもあります。それを練習していたというのはすごいですね。 [井伊氏] うちはできるだけ技術的な準備をしておこうとなりました。 アプリを作りたかったので、開発環境をあらかじめ作っておきました。オープンソースソフトウェアを使うことと音声入出力するというところにこだわっています。LLM(大規模言語モデル)もChatGPTを使ったらすごいいいものができることはわかっていますが、これからの時代、端末にLLMを入れて、ファインチューニングするようになると思います。AIスーパーコンピュータ「継之助」も使えるようにしていただいたので、ソースコードを入れて準備していました。 ■ 当日発表のテーマは「夢」「熱」「超」 [大沼氏] テーマは大阪が「夢」、福岡が「熱」、東京が「超」でした。非常に掴みどころのないテーマが発表されて、それを元に皆さんが開発をしていくことになりました。 ――このテーマを聞いて、どう作品に繋がっていったのでしょうか。24時間をどんな風に過ごしてたかというエピソードも教えてください。 たこ焼きテクノロジーズ: [三上氏] 20代の学生が2人と社会人が3人いたので、若者ベースで自由に考えてくれと言い、私はガレリアの準備をしていました。しかし、漠然とした夢と言うテーマでポストイットが40個くらい貼られているのですが、2時間経っても内容が決まらなかったんです。AIモデルが8個あるけど、できることは限られているよと話し、学生が就職するときに最適なアドバイスをしてくれる就職支援サービスにしようとなりました。 タイトルは「夢コンサルタント」です。学生が就職活動をするにあたり、自分の好きなことや得意なこと、将来なりたいことをGoogleフォームに入れ、そのデータをガレリアに取り込み、そこからスーパーコンピュータ「継之助」で推論させます。当時、一番性能が良かったCommand Rの104Bというモデルを使い、最適なアドバイスをします。また、ChatGPTでStable Diffusionのプロンプトを作り、ガレリアで将来像の画像を生成して、音声で回答するシステムになってます。 [大沼氏] 審査員の方からは、本当にビジネスですぐに使えそうだ、という声が上がりました。 捗dle: [捗dle] 作品名は「Head-Ban-King」で、ヘドバン(音楽に合わせて激しく首を振ること)をするゲームです。顔の向きやピッチなどをリアルタイムで計測して、ヘドバンのカウントをします。うまくヘドバンをカウントするとどんどん絵が変わって、ステージが進んでいきます。 [大沼氏] 福岡の他のチームの作品も全部よくて、その中でかなり判断に迷いました。捗dleは開発しているときに首を振り過ぎて痛めたらしくて、体を張ってよく頑張ったと、熱量が評価されました。 異業種データサイエンス研究会(関東): [井伊氏] 「超」というお題が出て、皆でアイデア出ししました。初はスーパーサイヤ人とか、安直なことを考えてましたが、この先、AIが進化していったらどうなるんだろう、と色々話が進みました。最終的に、飲んでいるコーヒーとか紅茶にAIが宿ったらどうなるんだろう、というアイデアが出ました。 こだわったのは音声入出力で、その際、リップシンクもさせてみました。それぞれに別々のAIを紐づけて、音声も喋り方も全部変えました。技術的には準備していたので、ずっと夕方までアイデア出ししていました。そのあと、池袋の家電店でパーツ買って、現物も作りました。 [大沼氏] 完全に「超」というテーマに沿っていました。見ただけで未来が見える作品だな、と評価されました。あと、デモの作り込みと動くハード自体を作ったのがすごかったです。 ■ 「晩御飯を食べてお酒を飲み出すともう働けず」「深夜に3人で交互に首をぶん回して……」 ――今だから笑えるエピソードや裏話はありますか? [三上氏] 大阪は専門学校の会場で、初日は6時まででした。そこから学生たちと私の事務所に帰り徹夜するという感じでしたが、晩御飯を食べてお酒を飲み出すと学生がもう働けなくなっちゃいました。だいたいはできていたので、僕が最後完成まで持って行った感じです。 [捗dle] 「Head-Ban-King」に至るまでいろんな想像を膨らませてアイデア出しをしました。ホテルで過ごしたのですが、深夜に3人で交互に首をぶん回して、デバッグしていたのがなかなか大変でした。 [井伊氏] 実はあんまり大変なことはありませんでした。私は日頃から、こういう時のために夜お酒を飲んだ後にプログラミングをするトレーニングを長年積んいます。池袋で飲んだ後、4人中2人が脱落したので、2人でプログラミングを進めました。 [大沼氏] 他のチームの人はグロッキー状態で寝てたりしていましたが、そんな中で、井伊さんだけちゃんと動いていたのは見ました。 ――AIは日々、新しいものが出てどんどん進化しています。そんな変化にどう対応していますか? [三上氏] 私は仕事をしながら、最新技術をインターンの学生に触れてもらっています。その時に一番新しいAIの技術を見せるために、キャッチアップしています。 [捗dle] 僕たちは今回、初めてだったのでAI関して、もうがむしゃらに学びました。最近だと情報がいっぱいあります。Xで調べたり、ChatGPTに聞いたりして、新しい情報を検索して取り入れたっていう感じです。AIに聞けば答えてくれますが、やっぱりググる(Google検索する)力も必要だと思いました。 [井伊氏] 私はAIとかプログラミングのセミナーを年間40~50回、オンラインで無料で行っています。その時に、論文とか読むだけではなくて、オープンソースのコードが手に入ったら、コードを自分で準備し、その場で実演するということをしています。そういう意味で、日々新しいものに触れてきました。 ■ 「わいわいやりながら目的を達成した時の喜びが」「あとは人を集めてノリで(笑」 ――このハッカソンで皆さんが感じられたことを教えてください。 [三上氏] ハッカソンという目的を通じて、普段一生懸命頑張ってる学生さんと社会人が混合チームてわいわいやりながら目的を達成した時の喜び、これはもう素晴らしいものだと思います。 [捗dle] 自分は本当に初めてでしたが、誘っていただいたことがきっかけでAIについて色々勉強したし、ハッカソンを通して、もっとAIについて学ぼうと思いました。そういう意欲に繋がるのもいい体験でした。 [井伊氏] 来年以降ハッカソンに参加する方々にメッセージを送ります。今回私は非常に入念に準備しましたが、これ良し悪しで、ちゃんとしたものはできますが、技術的には準備した範囲内でしかできないんです。そういう意味で、1人でもプログラミングとかAIができるメンバーがいたら、あとは人を集めてノリで出てみてください。非常に学びは多いと思います。 [大沼氏] 毎回、ハッカソンの募集を始めると人集まるのかというのが気になるところですが、幸いなことに各会場ともにすべて定員オーバーの参加申し込みをいただき、非常にありがたいと思っています。 参加していただいた皆さんは、アイデアを出して、開発して、プレゼンテーションまで含めて24時間でやるという、瞬発力と開発力、プレゼンテーション力が優れていたからこその優勝だったと思います。できれば、今回優勝しただけではなく、また来年も2連覇狙うぞ、と参加していただけるとありがたいと思っています。 以上が、「24時間AIハッカソン 優勝チームの集い」のレポートとなる。 皆さん、とても楽しそうだったのが印象的だった。事前準備に力を入れているのもそうだが、とにかくパッションが強い。意外とごりごりのハッカーというよりは、AIが好きな人たちがノリで出てみた、という雰囲気だ。井伊氏が言っていたように、AIに興味がある人で集まり、ノリで参加するのも面白そう。正式発表はされていないが、「第3回 24時間AIハッカソン」も開催されることだろう。次はぜひ、手を挙げてみてはいかがだろうか。
窓の杜,柳谷 智宣
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