「孤独死を恐れてはいけない…」ひとり暮らしの終末期、自宅で「清々しく逝く」ための戦略
地域の繋がりを活用する
いまでは多くの自治体で在宅死の制度が整いつつある。だから、「自宅で逝く」と決めたら、役所と地域包括支援センターに連絡しておこう。利用できるサービスや制度、依頼可能なヘルパーや訪問看護士、看取り医を紹介してもらうことができる。 ただ、一部の地域ではヘルパーや訪問看護士が不足しているケースがある。もしくは、すでに利用者が多すぎて新規の依頼を受け付けていない自治体もある。もし、既存の制度とサービスを頼れないのであれば、「地域の繋がり」を活用するといい。 普段から世話になっているかかりつけ医やデイケアの職員に在宅死の意志をはっきりと伝えれば、適切な人を紹介してもらうことができる。長い付き合いであれば、彼らもきっとその意志を尊重してくれるはずだ。 環境さえ整えれば、あとは自分の体の状態から予算などをケアマネと相談しながら、自宅で旅立つための生活を組み立てていけばいい。 好きな時間に好きなものを食べ、眠くなったら寝る。酒やタバコも在宅医と相談すれば、多少はたしなむことができる。病院や老人ホームなどの施設と違って、一日のリズムを自分で決められることが大きな喜びであり、穏やかな最期を迎える秘訣なのだ。
「逝き方」にこだわる
だからこそ、家で自分らしい最期を迎えるという覚悟が重要になってくる。前出の東郷医院院長の東郷清児氏は、「独りで生きていく」という確固たる意志が「孤独死」とは違って、患者に強い生命力を与える、と語る。 「私が診療していた乳がん患者の女性(70代)は、都内の自宅で一人暮らしをしていました。ある日、彼女は肺に水が溜まって呼吸困難になりましたが、入院して肺の水を抜く処置をしたら元気になって退院できた。『また肺に水が溜まることがあったら、少しの間入院して治療を受ければまた家に戻れますからね』と言ったら、『もう絶対に病院には行きませんから、よろしくお願いします』と頭を下げたのです。そしてその2週間後、我々スタッフとご友人が見守るなか、自宅で息を引き取りました。 死を受け入れていた彼女にとって何が大切だったのかを考えさせられました。自宅で最期を過ごすその中に、きっと彼女にとっての生きる意味があったと思うのです」 逝き方は「生き方」でもある。一人で慣れ親しんだ家で最期を迎える―。そこには「孤独死」にない充足感と幸せがあるのだ。
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)