地震の爪痕残る能登半島で「法律家の卵」たちが支援活動、「おしゃべり」通じて住民が抱える法的課題を発見
●仮設住宅では高齢者の孤立が心配された
11月の活動では、「おしゃべりカフェ」として、能登町内の7カ所の仮設住宅をまわった。最初に訪れた仮設住宅では、集会所に人が集まらず、仮設住宅を1軒ずつまわって声かけをおこなった。 「仮設住宅には知り合いがいない」 異なる地域から住民が入居した仮設住宅では、高齢者の孤立が心配された。 また、当然ながら、声をかけても会話につながらない住民もいる。集会所に集まる住民以外に対してもさまざまな方法でアプローチする必要があるが、その難しさを痛感した。
●目に見えない「苦労」が隠されている
現地調査の過程を通して、奥能登地域の人々の特徴としてよく聞いたのは「我慢強い」ということだった。集会所を訪れた人に困っていることはないかと尋ねると、「屋根のある場所に住めるだけでありがたい」と返ってくることが幾度もあった。 住民たちの我慢強さによって、奥能登地域の復旧は一歩ずつ前進しているが、その言葉の奥には、目に見えない苦労が隠されている。 こうした現状を前にして、学生たちは試行錯誤を重ねながら住民の話を聞くこととなった。話を聞く中で、法的な問題点を見つけることは法律家に求められる基本的なスキルであるが、それを身につけるのは容易ではない。こうした体験を通じて、「話を聞く」という単純にも思えることの難しさを知ることは、実務家に向けた重要な一歩である。 仮設住宅をまわるうちに、学生の戸別訪問での声かけにより、集会所に集まる人の数も次第に増えていった。学生が話を聞くうちに法的な課題が見つかることもあり、倒壊した自宅に関することなど、被災によって生じた問題もあれば、長年整理がされていなかった相続の問題が被災によって顕在化するというケースも見られた。 「ここで話をしたことで気持ちが楽になった」 そう言って帰って行く住民を見送る学生たちの姿は、次第に頼もしくなっていった。
●豪雨によってさらなる被害が生じた地域も多い
能登半島地震から1年が過ぎようとする現在も、被災地は復興に向けて道半ばの状況だ。9月の豪雨によってさらなる被害が生じた地域も多く、今後も多くの人々の助けが必要となる。 震災復興支援クリニックでは、能登半島地域での「おしゃべりカフェ」の活動や、自治体に対する相談支援をとおして、今後も被災地支援を継続することを予定している。 法科大学院における司法試験受験の早期化により、学生は受験勉強以外の活動に取り組むことが難しい現状があるが、そのような状況でも被災者支援に関心を寄せる学生は多い。 被災地を訪れて住民と直接対話し、課題解決のために頭を悩ませることは、法曹としてのスキルだけでなく、そのマインド養成にもつながる経験だ。 臨床法学教育によって、社会貢献と法曹養成の双方に取り組むことは、法科大学院の重要な意義であり、震災復興支援クリニックは今後もその取り組みを続けていく。