地震の爪痕残る能登半島で「法律家の卵」たちが支援活動、「おしゃべり」通じて住民が抱える法的課題を発見
●「おしゃべりカフェ」の活動の始動
現地調査をおこなう最後のグループの出発を目前に控えた9月21日、奥能登地域を集中豪雨が襲った。2日後に能登半島に向かったが、珠洲市、輪島市に向かう道路は寸断され、私たちは調査の予定を一部変更せざるを得なくなった。 そのような状況の中、能登町の仮設住宅で始めたのが「おしゃべりカフェ」の活動だ。現地調査で感じとった課題である「法律相談に対する心理的なハードルの高さ」を解消し、少しでも多くの住民が法的サービスにアクセスすることができるようにすることが一番の目的だ。 幸いにして豪雨の影響が小さかった地域の仮設住宅を訪問し、私たちは、集会所で住民の話を聞いた。 より多くの住民に気軽に参加してもらうため、タイトルは「おしゃべりカフェ」とし、事前に配布したチラシでは、法律相談よりも、法律家の卵と交流することをメインテーマに押し出した。その結果、当日は多くの住民が集会所を訪れ、法律相談を希望する住民も参加した。 仮設住宅の巡回相談のニーズを確認した私たちは、夏休みが終わったあとも、この「おしゃべりカフェ」の活動を続けることとした。 現地調査に参加した学生の多くは法科大学院の1、2年生であったが、秋学期が始まると、学生たちは授業や試験に向けた勉強でスケジュールが埋まってしまう。そこで、次の活動のメインとなったのは、7月に司法試験受験を終えた3年生だった。 現在、法科大学院では、在学中受験制度の開始に伴い、3年次の春学期までに司法試験受験科目を集中的に設置し、3年次の秋学期に実務科目を含む受験科目以外の授業が多く設置されている。 この期間であれば、受験以外の活動に目を向ける学生も多く、3年生の参加者を募ると新たに6人の3年生が加わった。 参加者には、前年に福島県での現地調査に参加していた学生や、元旦に珠洲市の祖母の家に帰省して自身も被災した学生、学部生時代に東日本大震災の被災地のボランティア活動を経験した社会人出身者の学生など、さまざまなメンバーが集まった。11月、今度は学生・修了生8人と弁護士2人で、再び被災地に向かった。