夏初優勝を狙う浜松北

　浜松北で「５番・左翼」を務め、チームの精神的支柱とも言える存在が杉本優（３年）だ。中学時代の右目負傷の後遺症を抱えながら、２年春から主に中軸を任されている。夏は２年連続で初戦敗退しているが、今春は１１年ぶりに県大会に出場した。期待が高まる中で「チャンスをものにして貢献する」と勝利へ貪欲な姿勢を見せた。 　杉本は中学２年時、シニアチームでの練習中、右目にボールが当たって眼窩底（がんかてい）を骨折。失明こそ免れたが、今でも「右目だけで見ると一部が見えなかったりする」と明かす。実は、高校進学を機に野球をやめるつもりだったという。そこで野球好きの父が出した条件は県内屈指の進学校・浜松北への入学すること。晴れて合格し陸上部に入部を考えていたが、仮入部の最終日に野球経験があったことで仲間に誘われ決意した。 　　　球が「二重に見えたり」　右打ちの打席では「ボールが時たま二重に見えたりする」。左翼の守備では左中間への打球は右目でボールを追うため「距離が分かりにくい」。予測した落下点に近づくと体を回し、けがをしていない左目で距離感を合わせてキャッチする。守備に苦手意識はあるが、守備範囲が広い千葉陽希中堅手（３年）がカバーしてくれる。「千葉だけでなく、仲間がいろいろ気を使ってくれてここまできた」と感謝した。 　今は右肩痛を抱えながら、練習を重ねている。「大変な経験もしている杉本を見ると、自分たちがくじけるわけにはいかないと思わせてくれる」と千葉。１９５３、６９年春に甲子園出場している古豪が、互いを支え合う一丸野球で臨む。（伊藤　明日香）