「同じ人間なのになぜ?」障がい者の平均月収が1万円に満たない実態から生まれた久遠チョコレート「創業当初は毎日100円のミートボールを食べて」
さまざまな食材を使ったテリーヌチョコレートが人気の「久遠チョコレート」。障がいのある人たちが全従業員の6割を占め、健常者と同じ水準の収入を得ていることで注目されています。代表の夏目浩次さんに創業時の思いを聞きました。(全2回中の1回) 【写真】並んでも買いたい!久遠チョコレートの「看板商品」(全12枚)
■「障がい者も稼げるビジネスをやろう」と ── 障がいのある人を雇用するお店を始めたきっかけを教えてください。 夏目さん:きっかけは、ヤマト運輸の創業者である小倉昌男さんの著書『小倉昌男の福祉革命 障害者「月給1万円」からの脱出』(小学館)を読んだことです。当時、ぼくは大学院で駅空間のバリアフリーを専攻していたので、車いすの人や身体障がいがある人のことは理解していたつもりでした。でも、障がい者が働ける場所が極めて限られていて、平均所得が(当時)月額1万円に満たないということは知らなくて、びっくりしました。
収入が多いからいい、少ないからダメということではないんです。問題は、選択肢がないことです。大学受験も就職活動も、うまくいく、いかないは別にして、人には選択肢がたくさんあるはずじゃないですか。なのに障がいがあるというだけで、いきなり選択肢がなくなってしまう。当時は措置制度というものがあって、障がい者が通う施設を役所が決めていたんですよね。自分の生き方を、誰かに決められてしまう。「同じ人間なのに、なんで?この国は豊かな先進国じゃなかったのかな」と疑問を持ちました。
障がい者が働く支援事業所を回ってみたら、「月に1万円払えればいい」というところばかりでした。それを批判するつもりはありません。みなさんに「それでもしかたがない」と言わせてしまう社会構造があるのだと思います。でも「しかたがない」で済ませていたら、その先の成長や発展はない。「福祉が悪い」とか「教育が悪い」とか、人はつい誰かや何かのせいにしたがるんですけど、これはぼくたちみんなが作り出した現状です。 そんなことが積み重なって、小さなスイッチがパパパパパっと押されて、「障がい者も稼げるビジネスをやろう」と、気がついたら大学院を辞めて、パン屋を開業していました。2003年のことです。