60歳で「熟年離婚」を考え中です。パート勤務で「厚生年金」に加入していましたが、年金は少なそうです。離婚分割をすると、夫の年金が「半分もらえる」って本当でしょうか?
離婚するときに財産分与が行われることがありますが、年金も「分割」が可能です。しかし年金の離婚分割について「妻は夫の年金を半分もらえる」と誤解している人も多いようです。本記事では、離婚時の年金分割の制度について、概要を紹介します。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
離婚分割とは?
老齢厚生年金の額は「厚生年金加入中に受け取った給与や賞与の額」と「厚生年金加入期間」によって決まります。つまり、給与収入が高く、たくさんの保険料を支払った人のほうが、多くの老齢厚生年金を受けられるのです。 離婚分割とは、そうした厚生年金保険料の納付記録を、多いほうから少ないほうに分ける制度です。夫のほうが妻より年収が高い場合、夫が支払っていた厚生年金保険料の一部を「妻が支払ったことに変更する」と考えると分かりやすいでしょう。 離婚分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。順に紹介していきます。 ■合意分割とは 合意分割は、夫と妻の両方が厚生年金に加入していた場合の分割方法です。合意分割では、夫婦の合意または裁判により、厚生年金加入記録の按分割合を決めます。なお按分できる割合は、最大で2分の1とされています。 ■3号分割とは 3号分割では、妻(または夫)が第3号被保険者だった期間について、相手の厚生年金記録の2分の1が分割されます。合意分割と違い、相手の合意は必要ありません。ただし3号分割される期間は、2008年4月以降の第3号被保険者期間に限られます。 ■再婚するとどうなる? 離婚分割をすると、その後にどちらかが再婚しても、分割された記録が元に戻ることはありません。また、どちらかが死亡した場合も同様です。なお、合意分割も3号分割も、離婚した日の翌日から2年以内に請求する必要があります。
「夫の年金の半分」がもらえない理由
離婚分割では「元夫の年金の半分を元妻がもらえる」といった誤解があるようですが、通常、分割される年金は半分には届きません。それはなぜでしょうか。 ■分割されるのは厚生年金のみ 老齢年金には、老齢基礎年金と老齢厚生年金がありますが、離婚分割の対象となるのは老齢厚生年金だけです。老齢基礎年金については分割の制度はありません。もっとも、妻も老齢基礎年金は受給できますから、夫の老齢基礎年金まで分割されるとしたら、逆に不公平ですね。 ■妻の年金記録も按分対象 合意分割では、夫婦両方の年金記録を合算して按分するため、妻の収入によっては、離婚分割で按分される年金記録はそれほど多くないかもしれません。逆に妻の年収のほうが多かったときは、妻の年金記録が夫に分割されることになります。 ■分割されるのは婚姻期間のみ 夫が厚生年金に40年間加入し、そのうち婚姻していた期間が20年の場合、合意分割の対象となるのは20年分だけです。独身時代の年金記録は分割されないため「夫の厚生年金の半分がもらえる」という結果になるケースは少ないでしょう。