<連載> 今すぐできる終活講座 実家の片付けが家族への思いも心にしまう機会に 妻の実家が大変③
亡くなった義父の墓じまいに加え、脳梗塞(のうこうそく)に倒れた義母の入院費用をどうするかといった出来事から相続の実態を目の当たりにしたのは、終活や相続のスペシャリストの齋藤弘道さんです。今回は、思わぬ出費となる「入院セット」の支払いから、遺品整理や生前整理についてお伝えします。
便利だが負担が大きい「入院セット」
義母は医療行為が必要な状況ですので、介護施設ではなく「介護医療院(旧介護療養型医療施設)」というタイプの病院に入院しています。したがって、入院費用には介護保険ではなく、健康保険が適用されています。健康保険は本人(義母)の収入に応じて自己負担額が決まるので、収入が年金だけの義母は所得区分が一番下であり、最低額の自己負担額で済んでいます。 ところが、パジャマ、タオル、歯磨きなどの生活用品をレンタルする「入院セット」については保険適用対象外で、全額が自己負担です。家族にとってはこうした物品を準備して病院に届けたり、持ち帰って洗濯したりする手間が省けますのでとても便利なのですが、1日あたり1,500円程度かかりますので、月間5万円近い支払いが必要となります。 入院費+入院セット+食費を毎月、介護医療院に支払うことになりますが、義母の年金でなんとかギリギリ賄える計算です。
入院セットの現状
ここで「入院セット」について調べてみたところ、以下のような状況であることがわかりました。 ●元々はベッドシーツなどをクリーニングし貸し出すリネンサプライから発展した歴史があるようです。入院セットの提供は、特に長期入院の場合に、患者や家族の手間を省くことを目的としています。洗濯や衛生管理が病院と提携する事業者で行われるため、入院生活を送るうえでのストレスを減らす意図もあります。 ●入院セットは通常、1日あたりの定額料金で提供され、月単位で請求されます。費用は1日あたり1,500円程度になることが一般的で、全入院期間にわたって加算されるため、長期になるほど費用負担が大きくなる場合があります。 ●病院によっては、自前のパジャマや洗面用具を持ち込むことを認めず、入院セットの利用を事実上「強制」しているケースも見られます。感染予防の観点や衛生管理の効率化をその理由としているようです。