和田秀樹「感情的な人の怒りスイッチは大迷惑」 自分への悪意と受け止めて感情的になってしまう
そうなると、思い込みの強い人はもうダメです。批判も異論もすべて、自分への悪意と受け止めて、感情的になってしまうからです。 ■ものごとをやんわりと受け止める 本来であれば、自分の意見や判断は一つの見方に過ぎなくて、「わたしはこうしたほうがいいと思う」というだけのことです。 それに対してべつの見方が出され、「さあ、どっちがいいかな」と議論が始まります。そこでおたがいの長所を取り入れた結論が出ることだってあります。つまり、自分がどんなに正しいと思う意見だって、最初は仮説、たたき台、もしくは結論に至るまでのプロセスの一つでしかないのです。
ところが思い込みの強すぎる人は、「結論はこれしかない!」と考えてしまいます。いわばこころの狭い状態ですから、相手のちょっとした皮肉や悪意に出合うとたちまち感情的に反応してしまうのです。 そこで、感情的にならないためのもう一つの基本技術を紹介しましょう。 こころの狭さを解消するためには、ものごとをできるだけやんわりと受け止めるしかありません。 「これしかない」ではなく、「いろいろあるんだろうな」と考える。
「こうなるはずだ」ではなく、「いろいろな可能性があるな」と考える。 「わたしをバカにしている!」ではなく、「バカにしているんだろうか、それとも単なる批判なのだろうか?」と考える。 万事、そんな調子です。答えを決めつけないで、とりあえず「曖昧」なままにしておくということです。感情的になりやすい人は、この「曖昧さ」が苦手です。その場で白か黒か、 敵か味方か、右か左かといった決着をつけないと気が済みません。
だから、自分の意見が少しでも批判されると、「じゃあ、わたしが間違っているのか?」と問い詰めます。すると相手はこう答えます。 「だれもそんなことはいってないよ。ちょっと疑問に思ったから質問してみただけじゃないか」 こういうケースがとても多いのです。ものごとの受け止め方が「是か非か」の両極端に偏ってしまい、中間の曖昧ゾーンを受け入れない傾向があります。 ■考え方や受け止め方を変える これではどういう相手と向き合っても、ちょっとしたことばや態度にカチンと来たり、思い通りにいかなくてイライラすることになります。イヤな感情を放っておくのではなく、こだわって自分からふくらませるのですから、日常生活の中で感情的になる場面がどんどん増えてきます。
つまり感情的になりやすい人は、日ごろの考え方や受け止め方の中に、イヤな感情につかまりやすい原因が隠されている可能性があります。 だとすれば、だれのせいでもありません。周囲の人間のせいではないし、まして本人のせいでもありません。単なる考え方や受け止め方の問題ですから、それを変えれば済むことです。 変えられることから変えていくというのは、感情コントロールの大切な技術です。
和田 秀樹 :精神科医