林陵平が解説するサッカー日本代表のサウジアラビア戦完封劇 「先制点が決まったカラクリ」と「したたかな守備戦術」
林陵平のフットボールゼミ サッカー日本代表はW杯アジア最終予選3戦目のアウェー・サウジアラビア戦も2-0と完封勝利。ボールを狙いどおりに運んで挙げた先制点や、相手の特徴に応じて左右のサイドで違う仕組みで臨んだ守備面など、人気解説者の林陵平氏に徹底解説してもらった。 【動画】サッカー日本代表 サウジアラビア戦を徹底レビュー 林陵平のフットボールゼミ第25回 【動画で見る】林陵平深掘り解説 サウジアラビアvs日本レビュー↓↓↓ 【ビルドアップが難しかった立ち上がり】 9月の中国戦、バーレーン戦は、ボールを保持して押し込む展開が続きました。しかし、今回のサウジアラビア戦はアウェーで先制点を取ったこともあり、その後自分たちがボール非保持で我慢する展開。そのなかで後半に追加点を挙げて2-0で勝利しました。 先制して、少し耐えながら追加点を奪えるのは強いチームなので、そういった意味でも大人のゲームだったかなと思います。 日本の初期配置は3-4-2-1。ずっとこの形が続いていて、今回もこのシステムを採用しました。サウジアラビアは、前の2戦は5-3-2や3-4-2-1を使っていましたが、蓋を開けてみたら4-3-3を採用してきました。 立ち上がり、日本はボール保持の局面で前進が難しかった。サウジアラビアの3トップが日本の3バック、板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹を見て、遠藤航と守田英正の2ボランチのところをインサイドハーフの6番と7番が捕まえる形なので、日本は真ん中からなかなかボールの出口を作れませんでした。 堂安律と三笘薫のウイングバック(WB)に対しても、サイドバック(SB)が縦方向にスライドして高い位置に出て来たので、日本としては基本的に自陣では選手が捕まえられている状況ですごく苦しかったです。
【ゴールまでの流れがすばらしかった先制点】 では、日本はどういう対策をとったのか。ここでやっぱり遠藤と守田ですよね。今回は遠藤のほうが多かったですが、DFラインまで下りて4バックのようになり、守田が中盤の真ん中に入りました。鎌田大地と南野拓実がインサイドハーフで、堂安と三笘も少し高い位置を取る。こうした4-3-3の形を状況に応じて作っていた。 後ろを4枚にすると、サウジアラビアの前線3枚では見ることができない。そうして遠藤と谷口で相手センターフォワードの9番の脇を越えていくと、前線3枚は下がらざるを得なくなってしまいます。 こうしてボール保持の局面で数的有利を作ったなかで、日本が前進の出口として使いたいのは、相手のアンカー8番の両脇のスペースでした。ここで鎌田と南野が縦パスを引き出して、チャンスを作るのがいちばんいい状況だった。 14分の得点シーンは、南野が守田からの縦パスを引き出したところから始まります。南野は右の堂安に展開。この時サウジアラビアの左センターバック(CB)が南野への対応に前に出たので、最終ラインは右SBが中央に絞り、左外の三笘はフリーになりました。 結局、4バックの相手を押し込んだ時には、3-4-2-1のWB、堂安と三笘はフリーな状況が生まれやすい。そこでカットインした堂安から逆サイドの三笘へ。日本が最近よくやっている、WBからWBへの展開です。 三笘がダイレクトでクロスを入れたのもよかったですけど、それをゴール前でヘディングしたのは守田です。最初縦パスを出した守田がここまでランニングしていました。普通ボランチだったら、縦パスを出したあとその場にとどまっているかと思うんですけど、何かを感じたんでしょうね。 こうなると日本は相手ペナルティーエリア内に人数が増えた状況。守田が三笘のクロスをヘディングでさらに折り返し、そのボールを鎌田が決めました。このゴールまでの流れはすばらしかったです。