【独占直撃】オーギュストロダンでジャパンCに参戦 ライアン・ムーアの〝本音〟 藤井勘一郎元騎手が直球質問
こんにちは、藤井勘一郎です。今回はライアン・ムーア騎手(41)インタビューの後編をお届けします。ムーア騎手と話していると、彼の高い分析力に驚かされます。彼の意図する内容を、読者の皆さんにできるだけ正確に伝えられていることを願っています。
日本と欧州の競馬の違い
――ムーアさんはこれまで世界中で騎乗されてきました。私たち日本人にとって夢の一つである凱旋門賞制覇はもちろんですが、日本馬が欧州の他の主要レースで勝つことも非常に難しいと言われています。日本と欧州の競馬の違いについて教えていただけますか ムーア まず長い空輸をクリアしなければなりませんね。多くの方は日本馬が欧州で戸惑う要因として重い馬場を挙げるでしょうが、同じくらい重要なのはコースの勾配の違いです。日本の競馬場は比較的平坦ですが、欧州は急な上り坂や下り坂が多いコースがあります。また、日本の直線の長さは(新潟を除けば)300~500メートル程度ですが、ヨーロッパにはさらに長い直線を持つ競馬場が多く、レース展開やスタイルが全く異なるのです。 ――逆に欧州馬が日本の競馬で対応が難しい点はなんでしょうか ムーア 日本の芝が軽く、最後の直線での瞬発力勝負になることですね。先週末のマイルCSで私が騎乗したイギリスの遠征馬チャリン(5着)をごらんになったかと思います。彼はスタート後、スピードについていけず、道中でリズムを立て直し素晴らしい脚で追い込みましたが、日本のレースに適応するのが難しい状況でした。
過去ジャパンCで騎乗した欧州馬の中で…
――今週末のジャパンCについておうかがいします。ムーア騎手はこれまで日本の馬で2勝(ジェンティルドンナ、ヴェラアズール)されていますが、最後にジャパンCを制した欧州馬は2005年のアルカセットまでさかのぼります。ジャパンCは欧州馬にとって大きなチャレンジですね ムーア 私のかつてのボスであるマイケル・スタウト調教師は、ピルサドスキーとシングスピールでジャパンCを制しています。この2頭はいずれもヨーロッパでもトップクラスの馬でしたが、どちらも僅差の勝利でした。11月は気温が低くなり、馬の体調管理が難しくなる上、長距離輸送や日本の検疫ルールへの対応も大きな挑戦です。 ――お話をうかがっていると輸送、馬のコンディション調整、レース適応力の確保がいかに困難か改めて感じます ムーア ただ今回ジャパンCに出走するシンエンペラーは、父がシユーニで、凱旋門賞勝ち馬ソットサスの全弟にあたる欧州の血統を持っています。彼は日本ダービーでも好走しましたし、アイルランドまで遠征してアイリッシュチャンピオンSではオーギュストロダンに僅差の3着に入る素晴らしい走りをしました。彼が異なるスタイルのレースに対応できる柔軟性を持っているように、馬の能力があれば相手の土俵でも適応することは可能です。 ――エイダン・オブライエン調教師はこれまでブルーム、カプリ、アイダホといった馬をジャパンCに送り込んでいますね。そして、今回のパートナーがオーギュストロダンです。彼は日本を代表する名種牡馬ディープインパクトの血統という点でも注目されています ムーア 欧州馬がジャパンCを最後に勝ったのは19年前と考えると、決して易しい挑戦ではありません。しかし、私はオーギュストロダンにも勝利のチャンスがあると信じています。近年では東京競馬場での検疫が可能になり、環境面でのサポートも改善されました。オーギュストロダンはオブライエン厩舎が過去に連れてきた馬たちと比べても、ずばぬけた素質を持っています。この馬には初めて騎乗した時から好印象を持ちましたし、すでにGⅠレースを6勝しています。彼のフットワークから見ても、東京競馬場のコースに適応できると思います。ディープインパクトもそうでしたが、彼の走りを見てサンデーサイレンスを連想する人も多いです。母馬であるロードデンドロンは2、3、4歳でGⅠを勝利した名牝で、オーギュストロダンも同じく2歳から4歳にかけてGⅠを勝ち続けています。彼はダービー馬であり、ブリーダーズCの勝者でもあり、アイリッシュチャンピオンSやプリンスオブウェールズSも制しています。私がこれまでジャパンCで騎乗した中で最も優れた欧州馬だと思います。 ――最後に、日本のファンに向けてジャパンカップへの意気込みをお聞かせください ムーア 日本馬は非常に強く地元で戦うアドバンテージもありますし、この挑戦が簡単ではないことは承知しています。ただ、全てがうまくかみ合えば、オーギュストロダンにはジャパンCを勝つ力が間違いなく備わっていると信じています。 ――貴重なお時間をいただきありがとうございました。とても興味深いお話ですごく勉強になりました
東スポ競馬編集部