2025年は不動産マーケットの重大な転機の年になる
日本は長らく「金利のない」世界にいた。事業を行うに際しても、オフィスビル建設などの設備投資を行うにおいても、ほぼ金利は無視できるほど優遇されてきた。2013年以降、国の狙いとしては大規模金融緩和を行うことで、企業の設備投資や新規事業開発を活性化させ、日本経済を浮揚させようとしてきたのだ。 【写真】この記事の写真を見る(2枚)
活況になった不動産マーケット
ところが、企業側には国内で新たな設備投資を行うような資金ニーズは乏しく、新規事業開発に打って出るような勇気のあるサラリーマン経営者も少なく、国の思惑とは裏腹に、多額のマネーが流入した金融機関は、本当は資金を欲しているはずの新興企業に流すことなく、その多くを日本銀行の当座預金に預けっぱなしにする体たらくを演じてきた。 この状況を憂慮した日本銀行は当座預金をマイナス金利として少しでもマネーを世の中に還流させようと目論んだ。結果としてマネーの多くはデベロッパーやゼネコン、投資ファンドなどに流れ、不動産マーケットは活況になった。
長らく続いた低金利政策の終結
しかし、長期にわたる「金利のない」世界は日本社会に様々な歪みをもたらした。国内外金利差の広がりは急激な円安を誘発、食料やエネルギーの多くを輸入に頼る日本では生活物価は上昇、一部の富裕層が株式や債券、不動産投資でさらに富を蓄積するいっぽうで、一般庶民の年収は上がることなく、生活が苦しくなるばかりとなった。 このままでは日本人の生活が壊れてしまう、再びデフレに直面したら、もはや金利引き下げの余地がない=政策タクトを振れない状況になることを危惧した日本銀行はようやく2024年7月、政策金利の引き上げを発表。長らく続いた低金利政策の終結を宣言したのだ。 2024年12月の金融政策決定会合では、前日のニューヨークダウ下落の影響を考慮したのか、引上げを見送ったが、来年以降のしかるべき段階で、政策金利の引上げが想定されている。
不動産投資において、金利上昇が持つ意味合いとは
さて、「金利のある世界」に戻った日本で、これまで宴を享受してきた不動産マーケットはこれからどのようになっていくのだろうか。 長らく不動産と金融の世界に身を置いてきた私にとって、金利はとても恐ろしい存在にみえる。不動産投資において金利上昇が持つ意味合いは非常に重要であるからだ。 これまで投資利回りが3%台であっても積極的に都心物件を購入していた投資ファンドにとって、調達金利の引き上げは、当然ながら期待投資利回りを引き上げて考える必要が出てくることを意味する。通常投資利回りの善し悪しを判断するには、ベースレートとなる絶対安全といえる投資対象の利回り、例えば国債レート(10年物など)を基準に置く(現状は年1.065%)。そのうえで、どれくらいのリスクを覚悟するか(これをリスクプレミアムという)を上乗せして、投資利回りを決定する。 政策金利は、短期プライムレート(銀行などが設定する最優遇取引先に対する1年未満の貸出最優遇レート)に連動している。つまり調達レートが上昇することは、投資にあたってのマーケットリスクが高まることを意味するのである。 これまでは3%台前半でもOKだった投資にさらなるリスクプレミアムを乗せる必要があるかを投資家は判断しなければならなくなるわけだ。要求する期待投資利回りが上がれば、その分購入価格を下げるか、物件から得ることができる賃料収入が上がるという前提が必要になる。