五月病、ストレス。心が折れそうならイスラエル生まれの「BASIC Ph」で自分の「回復力」を知ろう
「BASIC Ph」はイスラエルで生まれた
――様々なチャンネルがあり、たしかにいずれかを使ってストレスに対処している気がします。ところで、この「BASIC Ph」はどうやって生まれたのでしょうか。 新井さん:BASIC Phモデルは、イスラエルの心理学者、ムーリ・ラハド博士(以下ムーリー先生)によって、2004年頃に発表されました。 ムーリー先生は、1982年にイスラエル北部にCommunity Stress Prevention Center(地域社会ストレス予防センター)を立ち上げました。当時、イスラエルはレバノンやシリアとの紛争を抱えており、多くの市民が心身に傷を負っていたので、支援する拠点が必要でした。これまで、ムーリー先生は、長い間トラウマを体験した人を支援してきていて、その活動は、イスラエルだけでなく世界中で行われてきました。 その中で、とても大切なことに気づいたのです。それは、「トラウマを体験した人すべてがPTSDになるわけではない」ということです。 約8割の人は、トラウマを体験した後、自然に回復していくことがわかっています。現代の治療モデルは、病理モデルといって病理に着目することが多いのですが、ムーリー先生は、「人はどのように回復していくのか」と言う人が持つ回復力や健康に生きる力に着目していきました。その健康生成モデルの研究の中から生まれたのが「BASIC Phモデル」です。 ――人の持つ回復する力を研究する中で生まれたモデルなのですね。それでは、「BASIC Ph」はどのようにして日本に入ってきたのでしょうか。 新井さん:2011年の東日本大震災後、私は復興支援に携わっていました。2012年に、私が所属する学会にイスラエルから支援の連絡があったのが始まりです。彼らは、日本の復興支援を援助したいと無償で申し入れしてくれました。彼らとミーティングを重ね、その後、日本各地で支援者を対象にワークショップを協働開催していくなかで「BASIC Phモデル」が初めて紹介されたんです。 私にとって、ムーリー先生が語る「人が持つ強みに着目する」視点がとても画期的で、希望を感じることができました。ですから、多くの人に知ってもらいたいと思い、ムーリー先生との活動が始まったのです。