トランプ返り咲きで今後の金や原油価格はどうなるのか、長期金利は一段と上昇する懸念が出てきた
一方、アメリカ国内の天然ガス市場や液化天然ガス(LNG)の国際市場への影響は、比較的に短期に表れてくるかもしれない。トランプ氏は1期目にもLNG施設の新規建設に関しての規制緩和を進め、それを受けてLNG施設の建設が進んだことは記憶に新しい。 今回も同様にLNG施設の建設や規模拡張が進められるなら、アメリカのLNG輸出が一段と伸びてくることになる。これは、アメリカ国内の天然ガス市場にとっては強気、国際LNG市場にとっては弱気の影響をもたらすことになりそうだ。
さらに、エネルギー市場を考える際には、地政学リスクの高まりにも十分な注意が必要だ。トランプ氏がイスラエルへの支持を明確に示していること考えれば、今回の選挙結果を受けてイスラエルのネタニヤフ政権が、より強硬な方針を打ち出してくる可能性が高いと考える。 もちろんそれは、ハマスやヒズボラといったイスラム組織への攻撃強化であり、中東情勢が一段と緊迫するのは避けられないだろう。折しもイランは、最高指導者であるハメネイ師の意向もあって、イスラエルに新たな報復攻撃を行うことを警告している。
実際にイランがイスラエルを攻撃すれば、アメリカの強力な後ろ盾を得たイスラエルがさらに激しい反撃に転じる可能性は、高いと見ておいたほうがよさそうだ。そうした「報復の連鎖」によって状況が一段と悪化、最終的にイランがペルシャ湾の入口にあるホルムズ海峡を閉鎖するような事態に陥れば、供給不安が大きく強まる中で相場は急伸するのは避けられなくなるだろう。 もし、そこまでの事態に至らなくとも、イスラエルによるイランの石油施設への攻撃によって、同国の生産が減少する可能性は十分あるし、アメリカがイランへの制裁を強化することで、結果的に石油生産が落ち込むこともありうると、みておいたほうがよいと思われる。
■対中貿易で強硬姿勢なら、中国が報復するリスクも? もう1つ、対中政策についても考えておきたい。中国に対して60%を超える関税を掛けると息巻いていたトランプ氏が勝利したことで、今後両国の関係が悪化する恐れはかなり高そうだ。報復として、中国がアメリカの農産物に対して高関税をかける、あるいはアメリカからの輸入を制限するなどの報復措置を取る可能性も極めて高く、大豆やコーンなどの商品市場にとっては、大きな売り材料となりそうだ。