なぜ阪神は球団初屈辱の1試合2満塁被弾を許したのか?
負の連鎖が止まらない。阪神が13日、甲子園で行われた中日戦で2本の満塁本塁打を浴びての2-10大敗。1試合2本のグランドスラムは史上初の屈辱だという。チームの編成上、打てないのは、ある程度、予想はできた。この日も、近本の一発を含むルーキーの2人が稼いだ2得点止まり。だが、“プロ野球あるある”のひとつ、「援護がないと、そのうち投手陣までが我慢できなくなって崩壊する」という投打に及ぶ負の連鎖が、開幕したばかりの時点で、もう生まれつつあることは非常事態だ。 矢野監督も、試合後、「今の状況はピッチャーだけの責任ではない。今日みたいにあれだけやられると野手も追いかけていけないし、最近の流れの中では打線が援護できないからピッチャーへのシワ寄せがきている。どちらにも責任がある」と嘆いた。 この3試合で秋山が5失点、メッセンジャーが6失点、岩貞が6失点と、いずれも先発が崩壊。チーム防御率の4.79はリーグワーストだが、先発防御率となると5.33と、さらに数字がはねあがる。被本塁打「22」もリーグワーストである。 野球に「たられば」は禁物だが、2本の満塁本塁打は防ぐことができたものだった。いずれのグランドスラム被弾にも守備のミスが絡んでいる。 阪神は1点ビハインドの4回無死一、二塁で中日は投手の柳にバントを命じた。阪神バッテリーは初球にチェンジアップをファウルさせ、2球目がスライダーでボール、3球目にストレートを外角に決めて簡単に追い込んだ。ここまでの攻めは良かった。中日ベンチはスリーバントのサイン。セオリーでは、インハイへ速いボールか、投手の技術では追いつけない落ちるボールである。梅野は、投球と同時に立ち上がっていたので、選んだのは高めへの釣り球だったのだろう。だが、岩貞が投じたのは、防ごうという意思を感じさせず、わざわざバントを献上するような134キロの半速球。しかも、一番コントロールしやすい外角高めへ。 岩貞の右、三塁側に転がったゴロは、さらに記録に残らない失策を生む。大山は、岩貞が処理すると、早々と判断して、打球から一度目を切って三塁をカバー。バントは岩貞のグラブをすりぬけ誰もいない無人地帯となっていたショート付近に転がり内野安打となってしまったのである。大山の判断ミスである。封殺は無理だったが、大山がカバーしてひとつだけはアウトにしておくべきプレーだった。岩貞の制球ミス、大山の判断ミス、2つのミスが満塁弾を誘発することになる。野球とは、そういうものである。 京田へは初球のインコースへの甘いスライダーだった。