なぜ阪神は球団初屈辱の1試合2満塁被弾を許したのか?
試合後、京田は、「逆方向へのしぶといあたりを意識していたが、前の打席で初球を見逃していたので初球から思い切っていこうと決めていた」と種明かしをしている。 京田は二回二死一、二塁からスライダーを一二塁間に引っ張るタイムリーを放っているが、初球、2球目と、いずれも逆球となった甘いストレートを見逃していた。いわゆるヒットを打たれた「結果球」を、その打ち気満々の初球に選んだバッテリーの配球と、制球ミスが、甲子園をしらけさせるライトスタンドへのグランドスラムに変えさせたわけである。 堂上にとどめを刺された8回の2本目の満塁弾も、無死一塁から京田が流し打った三塁へのライナーを大山がグラブに当てて弾いたエラーから広がったもの。今季チーム10個目となる失策である。チーム打率.221、得点46は、いずれも広島に次ぐ5位で、本塁打8は最下位。打線が低迷しているためメンバーを固定して戦えず、やむなく「三塁・4番」でスタートした大山を3試合、一塁でスタメン起用した。まるっきり景色の違う場所でプレーさせると、どうしても守備のリズムがつかみにくい。打率.204の不振にくわえて、そういう負の皺寄せが、大山のミスにつながったのかもしれない。 今阪神がすべき緊急対策は何になるのだろうか。 元千葉ロッテの評論家の里崎智也氏は、「まだ競馬でいえば、スタートゲートを出たばかり。何もバタバタする必要はない」と指摘する。 「そもそも阪神は今年優勝を狙うシーズンなんですか。昨年は最下位で、私の順位予想は5位。ほとんどの評論家が阪神を5位か6位に予想しています。つまり梅野以外誰もレギュラーが確定していないチーム状況を見て、打てない、ということは、ある程度、予想されたわけです。想定外が何も起きていないということなんです。投手陣は悪くない。ガルシアの出遅れは別にして、メッセンジャー、西は悪くないし、秋山だって5失点はしましたが、ボール自体に不安要素はなかった。ただ昨年リーグワーストだった失策を、いかに減らすか、試合ごとにチームとして相手投手の攻略について何か明確な手を打っているのか、打っているのにできないのか、など課題はあります。やるべきことができていないように見えるのは問題ですが、今年は、矢野監督1年目の土台作りのシーズンとして、こんなところからドタバタせずに、個々の能力、スキルを高め、梅野に続くレギュラーを一人でも二人でも作ることに集中していくべきだと思いますよ」 優勝を狙える戦力でないことがわかっていても夢見るのがファン心理である。やるべきことをすべてやった上での力負けならファンも納得するだろう。だが、問題はベンチも含めやるべきことができていないまま負の連鎖にはまり込んでしまっている点にある。バタバタする必要はないが、危機感は持たねばならないだろう。“プロ野球あるある”のひとつ、負の連鎖を断ち切るには、エースの奮闘と打線爆発が必要だとされる。今日14日の先発は広島戦で完封で移籍初勝利をマークしている西である。