久保獲得の裏にあった元韓国代表イ・チョンスの大失敗。ソシエダSDが学んだ“補強の流儀”。「接触プレーを避け、当たりに行けと言ったら骨折した」【現地発】
「タケの持つ能力がチームが求めているものと合致すると判断した」
オラベは旺盛なパイオニア精神の持ち主でもある。今世紀初頭、ソシエダのSD(スポーツディレクター、当時の役職名)として、韓国人FWのイ・チョンスを獲得した。 念頭に置いていたのが、アジア市場の開拓だ。しかしこの賭けは成功しなかった。その加入を境に、スポンサーを引き付け、メディアの注目を集めているタケと明暗を分ける形になっているが、オラベはその背景にあるのが、「パフォーマンス」と重ねて強調する。 「パフォーマンスがキーワードだ。その大前提がなければ、タケを巡る金脈も存在しない。日本人だから、ブラジル人だから選手を獲得するのではない。チームのニーズに合った選手を獲得しなければならない。タケのケースもそうだ。イマノル(・アルグアシル)監督が志向しているサッカーを鑑みて、我々はタケの持つ多彩な能力がチームが求めているものと合致すると判断した。 もちろん選手獲得の際には、他の要素も考慮に入れる。そんな中で、最も避けなければならないのは、フットボールよりもビジネスを優先することだ。大失敗を招くことになりかねない。私はそれをイ・チョンスの獲得で経験した、タケとは全く状況が異なった。ワールドカップやアジアカップ、韓国リーグでのパフォーマンスは際立っていた。 しかしそれを当時のラ・レアルで発揮できるどうかという点において私は判断を誤った。フィジカルコンタクトが苦手で、接触プレーを避けているような印象すらあった。でもそれはイ・チョンスの責任ではない。チームのコンテクストに適応できると判断した私の責任だ。しまいには当たりにいけとアドバイスしたら、鎖骨を骨折してしまう始末だった」 「イ・チョンスのケースがあってから、常にビジネスよりもフットボールを優先しなければならないという結論に達した。パフォーマンスを発揮できることが獲得の大前提となった。パフォーマンスの中にはコンテクストへの適応力やクオリティといったものも含まれる。そしてそれらすべての要素を試合の局面に応じて変換することができて初めてチームに貢献することができるんだ」 取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア) 翻訳●下村正幸