「人工透析」が必要になるかもしれない⁉…「尿検査」でチェックしている「CKD」を知っていますか?
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第33回 『60代以降の男性は要注意⁉…健康診断で「尿蛋白」が「陽性」だったときの正しい対処法とは? 』より続く
クレアチニン(CRE)
健診で義務付けられている腎臓関係の項目は、検尿による尿糖と尿蛋白の2項目だけです。しかし多くの職場が「クレアチニン(CRE)」を加えています。慢性糸球体腎炎など慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)のスクリーニングになる項目です。 CKDなんて聞いたことがない、というひともいるでしょう。糖尿病性腎症、高血圧性腎症、慢性糸球体腎炎、多発性のう胞腎などの病気の総称です。それぞれ原因は異なりますが、腎臓の機能がゆっくりと損なわれて、最悪の場合は腎不全から人工透析が必要になるところが共通しています。そのためまとめて慢性腎臓病(CKD)と呼んでいるのです。 クレアチニンは、クレアチンの最終代謝産物です。この2つ、「チ」の字の後に「ニ」の字が付くかどうかの違いですから、よほど意識しないと同じに見えてしまいます。 クレアチンのほうは、筋肉のエネルギー源の一種で、アミノ酸から合成され、骨格筋に蓄えられています。そして運動で消費されると、老廃物であるクレアチニンになって血液中に溶け込み、腎臓で濾されて尿と一緒に排泄されるのです。
筋トレが好きな人に増える数値
健診で計測されるのは、血中のクレアチニン濃度です。これはクレアチニンの供給量と排泄量で変化します。供給は筋肉量によって決まり、排泄は腎機能で決まります。筋肉量は加齢によって下がってきますから、クレアチニン濃度も下がってきます。しかしそれ以上に腎機能が弱ってくると、差し引きで血中クレアチニン濃度が上がってくるのです。ですから年齢とクレアチニンの値で、いまの腎機能の状態が、おおよそ推定できるというわけです。 男性のほうが、女性より筋肉量が多いため、血中クレアチニンが高めに出やすくなっています。そのため正常値は次のように、男女別になっています。 男性:0.61~1.04mg/dL 女性:0.47~0.79mg/dL ただしクレアチニンの供給量は、筋肉量だけでなく、運動量によっても違ってきます。とくに筋トレなど無酸素運動で、大量に作られることが知られています。つまり筋トレ好きなひとほど、クレアチニンが作られやすいわけです。 一方、腎機能のほうは、筋トレに励んでも変わりません。そのため筋トレ好きなひとは、クレアチニンが正常値よりも高く出る傾向があります。 実際、日常的に筋トレに励んでいるひとは、クレアチニンに「*」が付くことがよくあります。もちろん病気ではありませんが、健診で引っかからないためには、採血前の数日間は筋トレを控えたほうがいいと言われています。 『放っておくと「人工透析」の恐れも…「腎臓病」の早期発見には健診結果のこの項目に注意! 』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)