センバツ高校野球 作新学院 チームの軌跡/下 新たに「徹底力」掲げ /栃木
◇課題向き合い、テーマ絞り練習 昨年の秋季県大会を制した作新学院は、投手陣が全5試合を12失点に抑えた一方、チーム打率は2割9分1厘にとどまった。これは秋季関東大会の出場権を得た3校の中で一番低かった。県大会を終えた小針崇宏監督は「凡退が多い。野手が前半に点を取っていれば、投手陣はもっと楽に投げられたと思う。今の打力では関東で勝てない」と、2週間の打力強化週間を設けた。【鴨田玲奈】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 普段の全体練習が午後6時半ごろに終わると、関東大会のメンバーは食事を取った後、再びグラウンドに集合し、同10時ごろまで打撃練習に明け暮れた。バッティングマシンやティーバッティングで打ち込み、順番待ちの時間もスイングをして、常にバットを振っている状態を作った。 主将の小森一誠(2年)は「黙々と練習することで、一人一人がしっかり自分の打撃に向き合っていく集中力が付いた」。小針監督も「関東大会前には『お、なんか打ちそうだな』と思うくらいに、バットが振れるようになってきていた」と手応えを感じていた。 そうして臨んだ関東大会。準決勝の常総学院(茨城)戦では二回に5点、決勝の山梨学院戦では七、八回に計9点を挙げ、好機で畳み掛ける集中力が光った。決勝は先発した野手全員が打率3割以上を記録。全3試合でのチーム打率は4割3分と力を発揮し、7年ぶりに関東の頂点に立った。小森は「力が付いたかは分からないが、練習してきたという自信が、打てるようになった要因」と振り返る。 各地区の優勝校が集う明治神宮大会では、県勢初の決勝まで勝ち進み、準優勝を果たした。新チーム発足時に掲げたスローガン「団結力」を大いに実践した一方、小森は部員たちの「気の緩み」もまた感じていた。神宮大会の前は全員が強く低い打球を目指して打撃練習に取り組んでいた。「今は各自がいろいろな練習に手を出し始めている。結果に満足して、欲が出ているのでは……」 主将は改めてチームの引き締めを図ることにした。大会1週間後、部員らを集めると、団結力に並ぶ新たなスローガン「徹底力」を掲げた。「テーマを絞って練習しないと全てが中途半端になってしまう」という危惧から、日ごとや時間ごとにテーマを決めて集中的に取り組む練習スタイルを取り入れた。打撃練習では20分ごとに区切り、低い打球を意識したり、フライを上げる打球を意識したりすることで1球に対する集中力が上がってきたという。 冬休み期間中も、それぞれが自分の課題と向き合ったテーマを決めて、筋力や瞬発力を鍛えるトレーニングに精を出した。センバツ開幕まで、1カ月半あまり。小森は「まだ全国で通用するレベルではない。しっかりメリハリをつけて、甲子園では日本一にチャレンジしていきたい」と闘志を燃やす。