日々大ごとになっているバスのカスハラ問題!! 運輸業のサービス業化が誤解の原因か?
■私鉄には関係ない話だが……
以上の国鉄の事例は国鉄との相互乗り入れ等の理由による一部の私鉄を除いて、基本的には関係のない話だが、国鉄が治安維持に自前で法執行機関を持っていたので、私鉄においても同様に(カスハラという点においては)治安は悪くなかった。 時代は下り国鉄が分割民営化され、JRを含めたサービス合戦が始まると、傘下のバス部門や事業者も同様にサービス合戦に入っていく。 この長いサービス合戦は利用者にとっては運賃や料金の値下げ、便数の増加、設備のアップグレード、駅施設の拡充等の恩恵をもたらした。同時に鉄道会社は運輸業からサービス業という位置づけに変化させたあたりからおかしくなったような感がある。
■お客様は神様なのか?
事業者は運輸業からサービス業としての位置づけに一段と重きを置き、それは「お客様は神様」という論理がまかり通る風潮になった。乗客の無茶な理論や無理難題、いわれのないクレームや八つ当たり等々、そのひどさは時代とともに増していく。 もはや鉄道会社やバス事業者ではそれらのクレーム対応に対して事実関係を調査して適切に対応する能力はなく、ただひたすら平謝りでその場をやり過ごす事例が多くなっていく。このお客様は神様という一見正当な論理が、勘違いや行き過ぎにより事業者も乗客も双方にとっての間違いのもとだった。
■現業職員の威厳の低下
このような時代の流れでは負の連鎖で、言ったもの勝ち、クレーム常習、ひどい場合には実力行使という流れになっていき、被害を被る現業機関の職員は鉄道会社をはじめとする運輸業に対しての職業としての魅力も失わせた。 それは就職先の人気職種からの陥落に見て取れる。2024年の就職情報会社の調査によると、就活を始めた段階での志望業界上位10位に鉄道・航空業界は入っていない。 実際にエントリーした業界でようやく10位に入り、選考を受けた業界ではやはり10位に入らない。最終的な志望業界となると、当然ながら10位以内には入っていない。昔の駅員や車掌は威厳があったし、むしろ怖かった感さえある。運輸業としての誇りからだろうが、とても文句を言おうとは思えない空気があった。 サービス業だと言ってしまえばそれまでかもしれないが、今となっては「誰得?」なのは明らかだろう。勘違いしたサービス業化がもたらした悲劇としか言いようがない。