なぜ林陵平の解説は面白いのか? 「バカが言っても話を聞かない」戦術マニア&言語化の鬼に訪れた転機
SNSでも公開したビッシリとメモしたノートと用語を記した「言語化集」
東大にスポーツ推薦などの制度はなく、体育会のア式蹴球部といえど、部員のほとんどが国内最難関の一般入試に合格してきたツワモノたち。当然のごとく学力に優れ、日本語力にも長けている。生半可な指導で納得させられるわけはなく、部員が理解し、納得できるように話をする必要があった。構造的に戦術を分析し、論理に落とし込み、そして分かりやすい言語表現にして、伝えていかなければならなかった。 東大では2021年から2023年まで3シーズン、指揮を執った。「3年間を経て、選手たちもわかりやすくなったって最後言ってくれました。伝えるために細かく言語化して、選手たちに落とし込むっていうのができるようになってきた感じですかね。監督として選手たちを動かすためには、選手たちに伝えないといけない、伝えるためには言語化しないといけない、って、それが関係したかなと思います」。この3年間での経験が今、解説者になっても大きな強みとなっている。 「監督になって全体を構造で見るようになりました。相手があるスポーツで、自分たちのスタイルもある。でもやっぱり4-4-2と3-5-2の戦いでは絶対に生まれてくるスペースがある。そういうところを理解しながら監督をして、それが解説にも繋がっていると思います」 試合を解説するために、選手やチームの特徴などをびっしりとノートにメモし、解説の際に使用するサッカー用語をまとめた「言語化集」も準備する。それは自身のSNS上でも公開している。視聴者に簡潔に、分かりやすく伝えるために、日々のアップデートも欠かさない。林陵平の“解説”の裏には、こうした背景がある。
福谷佑介 / Yusuke Fukutani