バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...今後を占う「6つのポイント」
テレビ司会者に買春疑惑、反ワクからロシアのスパイ関係者まで...「泥棒を警官」にするような閣僚人事連発で世界の度肝を抜いた第2次トランプ政権。今後の展開を6つのポイントで解説する
来たるべき未来を透視するには歴史を掘り下げるのが近道だという。だから今、私は第22代と第24代のアメリカ大統領グロバー・クリーブランドの伝記を読み直している。 【動画】家族に何が? トランプが、笑顔で近づく娘を「徹底無視」した瞬間を撮影...妻メラニアからは「キス拒否」 先週号でも指摘したが、先の大統領選を制してホワイトハウスへの復帰を決めたドナルド・トランプ次期大統領は、クリーブランドに次いで史上2人目の「非連続で大統領職を2期8年」務める男となる(同一人物の連続2期は1代として扱うが、非連続の2期は2代と数える。だから第45代のトランプは今度、第47代となる)。 さて、世に「歴史は繰り返さないが韻を踏む」と言うが、トロイ・セニックによるクリーブランド伝『鉄の男』を読むと、なるほどと思わされる。そもそもクリーブランドが2度までも大統領になれたのは「決して政治家に操られず、逆に彼らを軽蔑し、無視した」結果だと著者は書く。 クリーブランドには強靭な回復力とテフロン加工の鍋のように傷つかない強さがあり、だから誰も彼を止められなかった。 政治家たちが「蹴散らされたのは、彼の全てが鉄で出来ているように」見えたからで、クリーブランドはまさに「花こう岩を搭載した鋼鉄の船さながらに米国史を突き進んだ」のだった。 いかがだろう? もしもクリーブランドの名を伏せてこれらの文章を読ませ、さて誰の話かと問えば、たいていの人はトランプと答えるだろう。それはさておき、「トランプ2.0」を読み解くには以下のような問いに答える必要がありそうだ。
1. 次期政権の最重要人物は誰か?
子供時代の私にとって、親兄弟に優るとも劣らぬほど大切だったのはNFL(全米プロフットボールリーグ)中継の伝説的名コンビであるパット・サマーオールとジョン・マッデンの声だ。後年には人気テレビゲームの声ともなり、大学生の頃までお世話になった。 だからトランプ陣営で辣腕を振るった選挙対策本部長スージー・ワイルズの過去を調べていて、なんとNFL中継の名手サマーオールの娘だと知ったときには仰天した。「トランプにとってのワイルズはジョン・マッデンにとってのパット・サマーオールか」と題する新聞記事があったのだ。 感情的で衝動的、時に暴言も吐くマッデンを、「サマーオールは完璧な実況で補佐していた」という。このコンビによる中継は22年も続いた。荒馬マッデンを御する術を心得たサマーオールが、あくまでも黒子に徹したおかげだ。 娘のワイルズも同じ資質を持っている。トランプが米政治史上最高の復活を果たし、家族からイーロン・マスクに至るまでの面々を勝利宣言の舞台に呼んだとき、トランプはワイルズにも登壇して脚光を浴び、一言述べるように求めたのだが、ワイルズは前に出てきただけで発言はしなかった。 彼女はトランプに「アイス・レディー(氷の淑女)」と呼ばれている。トランプは常に、自分が宇宙の中心でないと気が済まない。だからワイルズのように控えめな人物が重用される。そんな彼女が大統領の首席補佐官(実権は副大統領よりもある)となる。女性としては史上初だ。 ある識者はこう指摘する。「見る者が見れば、政界の行事に彼女が影響を及ぼしていることは明白だが目には見えない」。そう、わずかな痕跡が見える程度でいい。公の場で、たいていは後ろに控えている。本人が公式発言をすることはまずない。自分自身についてはもっと語らない。 トランプの最大の弱点は自分自身を御せないこと。しばしば子供じみたことをし、平気で暴言・放言も吐く。そんな男の選挙戦をワイルズは仕切ってきた。ただし国政の運営は選挙戦とは違う。彼女のマジックがホワイトハウスでも効くかどうか。効かなかったら、最悪だ。