バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...今後を占う「6つのポイント」
3. 「プロジェクト2025」は?
2025年の政権奪還を見据えて保守派のシンクタンク「ヘリテージ財団」がまとめた膨大な政策提言が「プロジェクト2025」。大統領権限を大幅に拡大し、人工妊娠中絶の禁止など超保守的な社会政策を推進すると明記した文書で、当然のことながら過半数を超える国民には受け入れ難い内容だ。 だから民主党は選挙戦で、トランプが勝てば「プロジェクト2025」が実行されると叫び、有権者の不安をあおった。しかしトランプは本能的に空気を読み取り、自分は「プロジェクト2025」など知らず、読んでもいないと言い張った。 トランプは1期目で多くを学んだ。だから「プロジェクト2025」を熱烈に支持する2人を、上院の承認を必要としない要職に就けた。 国境管理(つまり移民の流入規制)を仕切る「ボーダー・ツァー(国境皇帝)」にトム・ホーマン元移民関税執行局(ICE)局長代理、大統領次席補佐官には元大統領上級顧問で移民嫌いのスティーブン・ミラーだ。 これで議会民主党の追及を受けることなく「プロジェクト2025」の提言を粛々と実行に移せる。トランプは賢い。まるで狐だ。
4. イーロン・マスクの権限は?
今のマスクはまるでトランプ家の一員だ。フロリダの邸宅マールアラーゴでは、一族と一緒に記念写真に納まっている。 買収したX(旧ツイッター)を最大限に利用して都合のよい情報を拡散させ、自分の設立したスーパーPAC(特別政治活動委員会)を通じて莫大な選挙資金を提供した功績ゆえの特別待遇だろう。 そのマスクを、トランプは官僚機構の効率化と整理・縮小を指揮する新組織、政府効率化省(DOGE)のトップに起用した。副官に抜擢されたのは、人呼んで「小トランプ」の実業家ビベック・ラマスワミ。もちろん目指すは「小さな政府」だ。 しかし、これはマスクを祭り上げる巧妙な策略かもしれない。なにしろマスクは車もSNSも宇宙開発も変えてきたスーパースターであり、トランプが夢見る「世界一の大富豪」の座をあっさり手に入れてしまった男。 そんな超人が近くにいては目障りだから、体よく脇に追いやった。そう読むこともできる。