バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...今後を占う「6つのポイント」
2. 口先勝負か政策勝負か?
選挙が終わってすぐ、私はシュールな機会を得た。連邦議会主催のプログラムで、ウクライナの政治代表団と面談したのだ。ロシアとの戦争で血を流しているウクライナ人にとって、トランプの勝利は最悪の事態だと思っていた私は、葬式のような雰囲気を覚悟していた。 しかし違った。彼らは明るく自信に満ちていて、私は啞然とした。 ウクライナ人は、熱烈なトランプ支持者並みのトランプ礼賛を口にした。いわく、ウクライナの領土が奪われたのはトランプ時代ではなく、オバマとバイデンの時代だった。 トランプは最初の4年間で、オバマと(ロシアの侵攻以前の)バイデンを合わせたよりも多くの殺傷兵器をウクライナに供与してくれた......。 国務長官にマルコ・ルビオ上院議員、CIA長官にジョン・ラトクリフ元国家情報長官という今の共和党で考えられる限りの妥当な人物を指名したトランプの選択は、「プーチンに味方する」という選挙中の発言よりも現実的な政策を優先した結果と言える。 だがピート・ヘグセスを国防長官に、タルシー・ガバード下院議員を国家情報長官に、マット・ゲーツ下院議員を司法長官に、ロバート・ケネディJr.を保健福祉長官に起用したトランプの人選は荒唐無稽で冗談としか思えない。 ヘグセスは単なるテレビ司会者で、行政の知識や経験はなく、ハイレベルの軍を指揮したこともない。元民主党員のガバードはロシアのスパイと関係があり、アメリカの敵対国の言い分とそっくりな主張をしてきた。彼女に情報機関の調整を委ねるなんて、まるでバラエティー番組だ。 買春疑惑で司法省の捜査対象となったゲーツを司法省のトップに据えるのは、これまた背筋が凍る話。反ワクチン派のケネディに医療行政を委ねるのも恐怖の茶番だ。 政界通のある人物に言わせると、トランプには最大の支持者に恩返しをする必要があり、選挙戦中の途方もない約束を一部なりと実現してやることで、熱烈なMAGA派の有権者を納得させたいのだろう。 連邦議会の上院がこんなばかげた閣僚人事を承認しないことは、トランプも承知の上だ。しかし、これで自分に対する共和党上院議員の忠誠心を試すことはできる。 「MAGA派を喜ばせ、党派の壁を越えてきたガバードやケネディのような仲間に感謝の意を表し、議会共和党の忠誠心を測り、リベラル派を沈没させ、党内エリートを震え上がらせることになるから、トランプにとっては一石二鳥、三鳥だ。実際の政策は、従来の共和党路線と大差ないものになるだろう」と推測する政治コンサルタントもいた。 しかし今のトランプは共和党を完全に支配している。そうであれば、こうしたとっぴな人選の脅威を過小評価するのは禁物だ。 あるコメンテーターは、ゲーツを司法長官に指名するのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領を国防長官に起用するのと同じくらい滑稽だと指摘した。そのとおりだが、それが現実。今の共和党なら、カマラ・ハリスよりもプーチンを選ぶに決まっている。