黄金ルーキーを手玉にとった阪神・藤浪晋太郎のワインドアップ&目線切り2021年型新フォームが凄いワケ
3回は育成ドラフトから入った2年目の小野寺暖をアウトコースのストレートで見逃しの三振に斬ると、評価が急上昇中のドラフト6位の中野拓夢(三菱自動車岡崎)にインサイドのストレートを見事にセンター前に弾き返されたが、セットポジションになってもフォームバランスが崩れることはなかった。続く坂本誠志郎をアウトコースへの152キロのストレートで遊ゴロ併殺打に仕留めた。 4回も佐藤を三振に斬った後に、木浪聖也を変化球を使って追い込んでから、最後は148キロの高速フォークで空振りの三振。糸原健斗にはストレートで押し込んでファウルでカウントを整えておいてからスライダーでライトフライに打ち取った。この変化球は若干高かったが、初実戦の段階で、そこまでの精度を求める必要はないだろう。 打者6人に22球を投げてストレートが17球で変化球が5球。ストレートは、すべて150キロを超えていた。 ワインドアップ&目線切りの2021年型の新投球フォームの何がどう機能したのだろうか。 阪神OBで評論家の池田親興氏は、「これまで見てきた藤浪のピッチングの中で一番いい投球フォーム。その効果が出ているコントロール、ボールの質だった」と高く評価した。 「ワインドアップには、癖が出るなどの問題もあるのだが、本人が楽で投げやすい、あるいは、投球のバランス、リズムがつかみやすいと感じるのであれば、それがベストだろう。僕が注目したいのは左足を上げて右足1本で立つ状態になった際、打者から一度、目線を切り三塁ベース方向を見る動作を入れた点だ。これまでの藤浪は、右打者にボールが抜けてぶつけてはダメだ、左打者にボールを引っかけてはダメだという意識が働き、体がホーム側に流れてしまうという悪い傾向が見られた。昨年中継ぎに転向してから、その傾向が多少、抑えられてきてはいたが、この動作を入れることにより、体が残り、いわゆる“間”ができた。静止状態からマウンドの傾斜を利用してスムーズに体重移動をすることで投球フォームの左右のぶれが少なくなっていた。だから抜け球、引っかけ球が減りコントロールが安定していた。今まで不得意だった左打者のインサイドにも投げることができ、必然、ボールの質もよくなりシュート回転のボールもほとんどなかった。“速いけど打たれる”ということもなくファウルになっていた。今後、変化球の精度、セットでの投球などを詰めていく必要はあるだろうが、この方向で進めば間違いなく結果につながると思う」 池田氏は、「現役時代のソフトバンクの斉藤和巳が同じように投球動作の途中で、一度、三塁ベース側を見て、静止時間を作ることを心掛けて体を残しフォームのバランスを作っていた」と指摘したが、まさに藤浪も、「頭の位置を残す」ことをテーマに、その斉藤氏の「目線切り」を参考にして新フォームにチャレンジしている。 その効果は、過去の名投手で実証されていて、昔で言えば剛球でならした山口高志氏、メジャーで活躍した岡島秀樹氏、現役ではソフトバンクのエース、千賀滉大らが同じように投球動作の途中で“間”を作るために目線を切る。