暗闇に光を届ける―希少難病の支援団体 検査・診断支援するサイトセミナー開催
●宇佐美真一先生(信州大学名誉教授 人工聴覚器学講座 特任教授) 遺伝学的検査は多くの疾患で行われているが、難聴はその社会実装がもっとも進んでいる領域だ。難聴は、難聴が唯一の症状である非症候群性難聴とほかの症状も伴う症候群性難聴の2つに分けられる。症候性難聴は300~400の症候群で、一部は国の指定難病になっている。難聴の原因でもっとも多いのは遺伝子で、非症候群性難聴だけでも120以上の遺伝子の関与が分かっている。日本人難聴患者1万人のデータを集計した研究では診断率は約40%、先天性難聴に限れば約50%が診断に至っている。そのため遺伝子検査によって原因を調べることは、患者にとっても医師にとっても重要だ。 先天性難聴の遺伝子検査は当初研究として開始されたのち、2008年に先進医療として承認され、2012年に保険適用となった。何度かのアップグレードを経て、2022年からは50遺伝子1135変異のスクリーニングが可能となっている。難治性聴覚障害に関する調査研究は全国の60施設とともに実施しており、各都道府県に1~2か所の拠点を設けている。これらの拠点が窓口となり、診断、そして治療につなげていきたい。 難聴領域では、研究で明らかになった成果を保険収載として臨床応用を進めてきた。保険収載されないとなかなか普及しないため、学会や患者会が連携して働きかけを行っていけるとよいと思う。 ●盛一享徳先生(国立成育医療研究センター研究所 小児慢性特定疾病情報室) 今回の診療報酬改定で、将来的に大きなゲノム検査につながるであろう網羅的な遺伝子検査が保険収載されたことは大きな進歩だと感じている。同じ病気でも複数の遺伝子が原因となっていることも多いので、複数の遺伝子を一度に調べられると診断までの時間も短縮でき、医療経済的にもメリットがある。 日本語の医療情報は正確性に不安を覚えるサイトがあることも事実だ。検索サイトはよく仕上がっている。難しい情報を正しく伝えていくことは大変だが、支援いただける方を増やしつつ、正確性を損なわないよう信頼性を担保しながら着実に保守・更新を進めていただけるとよいと思う。関係者に「ここをみれば大丈夫」と信頼していただけるサイトとなることを期待したい。
メディカルノート