暗闇に光を届ける―希少難病の支援団体 検査・診断支援するサイトセミナー開催
◇部会1 パネルディスカッション「希少難病に関する検査施設と専門医の情報不足を考える」
部会1のパネルディスカッションでは、希少難病の情報不足について実例を交えながら語り合った。発言要旨を紹介する。 ◇ ◇ ◇ *司会・プレゼンテーター:難波栄二先生(医療法人晴顕会 大谷病院 副院長、鳥取大学 研究推進機構 特任教授) 現在、希少難病に関する情報は以下のようにさまざまなサイトで提供されており、集約されていない。 1. 難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/ 対象は、国が指定する指定難病338疾患。診断基準などの疾患情報や助成制度などの情報が中心。 2. 小児慢性特定疾病情報センター:https://www.shouman.jp/ 対象は、国が指定する小児慢性特定疾病788疾患で、指定難病以外も多く含まれる。診断基準などの疾患情報や助成制度などの情報が中心。 3. 一部の学会による情報提供 4. 全国遺伝子医療部門連絡会議:http://www.idenshiiryoubumon.org/search/ 遺伝カウンセリングなどを実施している施設の情報。 5. 遺伝学的検査の情報 ・遺伝学的検査検索システム:http://www.kentaikensa.jp/ 日本人類遺伝学会により運営。対象は、保険収載されている遺伝学的検査と実施施設の情報。 ・かずさDNA研究所:https://www.kazusa.or.jp/genetest/test_insured.html(保険収載)、https://www.kazusa.or.jp/genetest/test_non_insured.html(保険収載以外) 保険収載の有無にかかわらず実施している遺伝子検査の情報を掲載。 指定難病、小児慢性特定疾病以外の希少難病については、国による情報提供は充実していない。医師も患者・家族も情報を得ることが困難で、なかなか専門の診療機関や専門医に結び付かず悩むことが多い。 指定難病では全体の7割程度について遺伝子検査の保険収載が進んでいる。2024年度の診療報酬改訂では、複数疾患におよぶ遺伝学的検査全体が保険収載される予定だ。これを皮切りに網羅的な解析が保険診療で行えるようになると、診断へのアクセスも改善されると思う。 ●鈴木歌織さん(HNRNP疾患患者家族会 HNRNP JAPAN 代表) HNRNP疾患とは、主に遺伝子の突然変異によって起こる神経発達障害で、乳児期から顕著な発達遅滞、てんかんなどの症状が認められる。非常にまれな疾患で患者数は世界全体で700人ほどである(2023年時点)。確定診断のためには未診断疾患イニシアチブ(IRUD)に参加するなど詳しい遺伝子検査が必要だ。そのため、HNRNP JAPANの会員は初診から診断まで平均3.7年かかっており、内訳として、専門医につながるまでに数年を要していることもある。 情報が圧倒的に不足しているため、文字どおり真っ暗闇の中で途方に暮れてどこにも行けない。患者・家族は知らないことに対しては決断も選択もできない。そのため、まずは選択肢を示し、対話し、決断に寄り添ってほしい。たとえ現時点では治療法がなくても、診断がつくことでつながれるコミュニティや支援、研究などがある。日本語の情報が存在することそのものが非常に大きな助けになる。 ●辻邦夫さん(一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA) 常務理事) JPAは難病や慢性疾病などの患者団体や地域難病連など、約100団体が集まる患者・家族の会の全国組織だ。直近の実態調査でも、約4割の患者さんが確定診断まで長くかかったと感じたと回答し、中でも染色体や遺伝子に変化を伴う症候群の患者は診断まで5年以上かかっている例も非常に多かった。また、約1割の患者さんは確定診断に至るまでに10以上の医療機関にかかっていた。長かったと感じた理由として最多だったのは「医師もその疾患について知識や経験が不足していたため」という回答だったことは印象的だ。 患者は症状が進行するなかで大きな不安を抱え、診断がつくことで「正直ほっとした」という方も多くいる。今後、遺伝子治療など治療が進展していくなか中、患者にとって確定診断は治療につながる大きな期待だ。有益な情報は患者だけでなく医療者にとっても助けになる。今後は治験情報の充実にも期待したい。