子どもの脳に悪影響を及ぼす「子育ての誤解」 “泣かない=いい子”として育てられた子の“危うさ”
いい子って「泣かない子」や「自立してる子」のことなの? それは誤解かも…!
ネットやSNSが発達している現代社会は、子育てするにあたって様々な情報を簡単に得られるという点ではとてもありがたい時代になったと思います。 【マンガで読む】「絶対に学校行かない!」不登校で悩み、葛藤した親子の3年間。悩んだ先で見つけた結論とは…… しかし、調べているうちに、子育てにおいて、何が正解なのかが分からなくなってしまっていませんか? 自分の子どものためだと思って、色々と実践してみたけれど、いまいち結果に結びつかない…。 もしかして、良かれと思ってやっていたことが、子どもの脳を育てるためには逆効果だったなんて事があるかもしれません。 そんな“子育てにおける誤解”を小児脳科学者である成田奈緒子先生が詳しく解説した著書『誤解だらけの子育て』をご紹介します。 今回は「泣かない子はいい子だ」という子育ての誤解について解説! 子どもの脳の発達にとって大切なこととは? 
【誤解】泣かない子はいい子だ
生まれたばかりの赤ちゃんは、「泣くこと」でしか空腹感や不快感などを表現できません。まさに命をつなぐために泣いているわけで、「元気な泣き声ね」などとポジティブに受け止められることもあります。 ところが、言葉での意思疎通ができるようになると、子どもの「泣く」という行為は、たちまち大人たちから、ネガティブな反応を受けるようになっていきます。 親御さんの側を離れるときに不安がったり、物事が自分の思い通りにならず、癇癪を起こしたり。しばしば感情の激しい発露とセットになっているため、子どもに泣かれると、大人はつい、うんざりしがちです。逆に、いやなことや痛い思いをしても、グッと泣くのをこらえた子どもに対しては「我慢して、えらいね」などと声をかけたりします。 しかし、5歳までの原始人のうちは喜怒哀楽を我慢せず、思いっきり表現させてあげることが大切です。 人間の脳は「からだの脳」と「おりこうさんの脳」、そして「こころの脳」の3段階が順番にバランスよく育ちます。「からだの脳」は生命の維持に欠かせない機能をつかさどっていますが、その中の一つに「情動」があります。これは、不安、怒り、恐怖、衝動性といった、自分の身の回りに起きたことに対して反射的に生じる、原始的な心の動きを指します。 情動がなぜ生命の維持に必要なのでしょうか。それは、例えば崖から落ちそうになったときに、とっさに恐怖を感じることで足を引っ込めたり、目の前に天敵が現れたときに、怒りを感じることで威嚇したりして、身の危険を回避することができるからです。命を守るための情動は、魚類や両棲類、爬虫類など、どんな原始的な動物にも備わっています。 一方、人間はもう一つのこころの働きである「情感」も備えています。情感とは、周りの人や置かれ自分が置かれている状況などをふまえて起こるこころの動きで、安心、喜び、好意、自制心などがあります。 ところで人間は、「おりこうさんの脳」を発達させ社会や文明を発達させてきました。高度に発展した社会に暮らしていながら、目の前の人に「怒り」を感じるたびに殴ってしまったり、欲しいという「衝動」が起きるたびに奪ってしまったりしては大変ですよね。 そこで人間は、「からだの脳」と「おりこうさんの脳」をつなぐつながり=「こころの脳」に情感の機能を備えることによって、生命の危機に瀕したとき以外は、周りの状況や自分の置かれている立場を考え、情動を自制するようになりました。 衝動的に泣いたり怒ったりせず、感情をコントロールできるようになるには、情感、つまり前頭葉をうまく働かせる必要があります。このことからも、前頭葉をうまく使えるようにすること、つまり「こころの脳を完璧に育てること」が子育ての目標であるというのは、間違いではないことがわかります。