インドのSaaS市場、2030年に5,000億ドル台に。同市場のポテンシャルは?
カギとなる生成AI
SaaSの今後の発展に欠かせないのが、生成AIとの統合だ。インドでは従業員エクスペリエンスのプラットフォームAtmicworkや、スモールビジネスに特化したBlubirchなどが生成AIと統合したSaaSで、新規資本を集めている。前述Garg氏は、「クラウドベースが標準していく中で、生成AIの波がTAM(対応可能な全体の市場規模)に2,500億ドル以上の価値を追加している」としている。 ベンチャーキャピタルの視点から、SaaSのスタートアップは将来性のある長期投資の機会とされているが、今後スタートアップの創業者が資金集めよりも目に見える価値の構築を優先させることによって、投資家を惹きつけることができるだろう」と、CleverTapの創業者兼最高製品責任者のJain氏は予測しており、その理由を「SaaSのビジネスモデル、特にB2Bは本質的にスケーラブルであることや、世界のデジタル変革やクラウドコンピューティングの成熟といった外的要因は、SaaSのエコシステムの進化を促進させるのみ」としている。 実際に、ベンチャーキャピタル投資は2022年と比較して2023年には54%の落ち込みを見せたが、AIを導入した企業の資金調達は大きな伸びを見せている。ゴールドマンサックスの見積もりでは、2021年に210億ドルだった世界のAI投資が2025年までに2,000億ドルにまで届くだろうとされている。 また、多言語モデルアプリの台頭によって基礎テクノロジーのアーキテクチャの変更や顧客のニーズの再形成を迫られるため、SaaS企業のAIとの統合が極めて重要になるとして、SaaSBoomiとマッキンゼーの報告書では、生成AIはSaaSにとっての「分岐点」と位置付けている。今後、SaaSへの投資はAIに注力した動向を見せると予測される。 SaaS市場の急成長は、世界的にもインドでも、そのスケーラビリティやソフトウェアアップデート、柔軟性のある価格モデルが下支えしている。中でもインドの成長は世界平均の18%を上回る23.7%と見られており、その背景にあるのは、世界のクラウド成熟地域に追いつこうとインドの企業組織がクラウド化の加速を優先事項に掲げ始めているから、とガートナー社の主任研究員Amarendra氏が述べている。 インドのSaaS企業が世界の他社に対抗できる顕著な特徴として、効率指標が高いことだとしており、さらに高金利がインドのSaaSビジネスにさらなる優位性をもたらすと見られている。ホリゾンタルとヴァーティカルの双方で展開するインドのSaaS企業は、明らかに世界に対抗できる力を見せ続けるだろうと予測されている。