インドのSaaS市場、2030年に5,000億ドル台に。同市場のポテンシャルは?
世界最大の人口を抱えながらも世界に目を向けるインド
2023年末現在、ナスダックに上場しているインドのSaaS企業は、チェンナイで設立されたクラウドベースのFreshwork一社のみだ。ただ、上場していなくとも年間経常収益が5,000万から1億ドル規模の会社が最大で16社、2,000万から5,000万ドルが最大25社、1,000万から2,000万ドルが最大35社という顔ぶれで、インドのSaaSへの投資家たちにもリターンが見られるステージへと移行してきた。 インド発のSaaSは14億人もの人口を相手にする「インド市場第一」と、世界中の顧客向けの販売をしている「世界市場第一」の2種類がある。 インド市場第一の企業には、Perfios、Lentra、MP2、Zopperなどの日本の投資市場でも知られる銘柄のラインナップ。一方で世界市場向けの企業には、Zoho、Freshwork、ゲインサイト(Gainsight)、Icertis、Zenoti、LeenaそしてEntropikが挙げられる。うち、Zoho、Freshwork、Icertisは発売当初から世界向けに販売を開始し、EntropikとLeenaの両社はまずインド市場で発売を開始してから世界へと進出している。 両カテゴリー共に、5,000万ドル以上の規模で収益を上げている企業は数十社にも上る。「インドに投資するにはまたとない最高の時機」とする報告では、インドのケンタウロス企業およびユニコーン企業は2030年までに200億から250億ドルの収益となると予想している。
資金調達と共に成長を続けるインド企業
躍進を続けるインドのSaaSは、その規模と成熟度においてアメリカに次ぐ世界第2位にまでのぼりつめている。 Business Todayのインタビューで、ベイン・アンド・カンパニーのアソシエイトパートナー、Ericson氏は「インドのSaaS企業の急増とその卓越に注目している」と述べ、「世界的なSaaS企業の設立や成長において、これまでイギリスやイスラエルの後塵を拝していたインドが、ここ3年間で急成長している」と分析。また、世界でのインドのSaaSシェアが8%になれば、2027年にトップの座も狙えると予測している。 インドのスタートアップにとって重要な成長戦略は、アメリカやイギリスといった大きなSaaS市場での販売だ。 現在、インド市場から得られる収益は20%に過ぎないとされ、インドのSaaS企業トップ20社の統計でも、アメリカ市場での収益が50%を超えている。アメリカ市場にはより莫大なポテンシャルがあり、現在インドのトップSaaS企業の85%が規模拡大のために、アメリカ市場に進出している。 アメリカ以外の市場では、市場のノウハウがあり距離的にも優位なインドおよび中東がホットスポットとしながらも、この市場は多様性が大きなネック。「これらの市場で成功を収めるには、屈強なパートナーのネットワークが欠かせない」とエカ・ソフトウェア社のCEO兼創業者のGarg氏が述べている。 ベイン・アンド・カンパニーの報告書では、バイヤー感情もポジティブだとしており、企業のソフトウェア購入意思決定者の65%が、2023年の予算拡大を示唆していた。また2022年は資金調達額も史上最高の51億ドル以上を記録したものの、同時に40社が清算へと至った。その結果として、投資家たちの機運は、インドのSaaSへの投資を増額する方向にあるとしている。 投資傾向は、アーリーステージでの投資の増加が主流で、さらにシードも取引数(対2021年比65%増)、取引額(170万ドル対130万ドル)ともに増加している。シリーズAでの投資はほぼ倍増、レイターステージは現在の市況によって最大手数社が増額しないことを選択したため減少傾向になった。