「ママ大好き」勉強嫌いの中学受験、家中荒らした息子がご機嫌になった切ない理由
中学受験に限らず、人が何かに挑むとき、まわりの家族もハラハラし、緊張する。思ったように結果が伸びないとイライラする。いわんや小学生の中学受験では、そのイライラとどう付き合うのかは難しいだろう。 【マンガ】受験生以外にも響く!中学受験を舞台とした『二月の勝者』12の名言 「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」 と語る森将人さんの連載「勉強嫌いの中学受験」7回は、第一志望の慶応や第二志望の立教新座の入試本番直前、森さんの妻と息子が衝突し、息子が暴れて家をめちゃめちゃにした翌日の話をお伝えしている。過去問が合格ラインを超えていると思ったら、実は回答を写していたということも発覚していた。 それでも森さんは息子を責めるではなく、冷静に息子に話しかけ、勉強することがいま本当に大事だということは塾の先生から上手につたえてもらった。 おかげでイライラして暴れた直後でも、また中学受験に向かって進むことができるようになったが、親が本番までできることは何なのか。
息子から携帯に電話が
ぼくが仕事で外出しているときのことだ。孝多から携帯に電話があった。 「過去問やってみたら、算数が1問以外は全部解けたよ」 「すごいじゃないか。点数はつけたのか?」 「自分でやっていいの?」 過去問の採点は、親がするよう塾からいわれていた。 「ママにお願いしてみるか?」 「そうするよ」 電話を切ると、しばらくして70点台が取れたというショートメールが来た。立教新座の算数はむずかしいことで知られている。平均は例年30点台なので、大きく平均を上回る点が取れたことは大きい。 ぼくがすごいね! とメッセージを返すと、同時に妻から電話があった。 「点数が上がった途端に、ママ大好きとかいって、ズルいよ。私はすぐに気持ちを切り替えられないから」 「気分屋なんだから、つき合ってあげてよ」 「もうご飯も作らなくていいっていったくせに……」 ため息をつく妻の口調が楽しそうだ。朝の目覚めには炭酸がいいという話を聞いて、妻は炭酸水をたくさん買い揃えていた。効果があるのかはわからないが、少しでも機嫌よく勉強をして欲しいという思いの表れだ。彼女なりに気を遣っていた。