どうなる広島の新スタジアム問題
周囲をフェンスで覆われたさら地の一角に残されたライトスタンドの一部。広島市の中心部にある旧広島市民球場跡地がいま、全国のサッカーファンの注目を集めている。 この跡地を新スタジアムの候補地とするべく独自のプランを発表したサンフレッチェ広島と、南区宇品出島地区の「広島みなと公園」を推す行政側。両者の主張が平行線をたどったまま、3月下旬に発表される予定だった最終候補地は一転して白紙となったからだ。 幾度となく浮上しては立ち消えとなった、新スタジアム建設の機運が一気に盛り上がったのは2009年。広島東洋カープの新本拠地、マツダスタジアムの開場を受けて「次はサッカーの新スタジアムを」という声が各方面から上がった。 広島が長くホームとするエディオンスタジアム広島は、Jリーグのクラブライセンス審査で「トイレの数と屋根のカバー率」で制裁対象に指定され、進捗が見られなければ「戒告」に変わると通告されている。 クラブライセンスのはく奪もありうる状況に、交通アクセスの悪さが追い打ちをかける。アストラムラインを利用した場合、市内中心部からの移動は約1時間。駐車場の数も少ないため、Jリーグチャンピオンシップを戦った昨年12月は周辺が大渋滞となった。 広島県サッカー協会、広島、広島後援会の三者が連盟で、広島県及び市へスタジアム建設要望書を提出したのが2012年8月。その年には広島がJ1で初優勝し、翌年1月に提出された署名は37万579件に達した。 こうした動きを受けて、広島県、市、広島商工会議所、県サッカー協会による「建設協議会」が2013年6月に発足。最終的には「旧広島市民球場跡地」と「広島みなと公園」の2案をまとめたうえで、2015年1月に解散した。 新たに発足した「作業部会」の顔ぶれはしかし、広島県、市、商工会議所の三者のみ。県サッカー協会や広島側のメンバーが加わらなかったことで、議論の中身がまったく伝わらなくなった。 迎えた2015年7月。湯崎英彦知事、松井一実市長、深山英樹・商工会議所会頭によるトップ会談が行われ、終了後に湯崎知事が「検証結果から旧市民球場跡地は、多機能化・複合開発、スタジアムの規模に課題がある。広島みなと公園が優位と考える」とコメントする。 流れが一気に「広島みなと公園」に傾いていく状況に、広島側は危機感を募らせた。依然として「作業部会」からの連絡がないなかで、今年3月下旬に候補地が最終決定するという報道に接し、今年3月3日に緊急記者会見を開催する運びとなった。